【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
11.潤□願い□
11.潤□願い□
朝目覚めると、隣には菫がいない。たったの3か月の出来事ではあった。
けれど菫がこのベッドで眠るようになって右側を開けておくのは俺の癖になりつつあった。右手を伸ばしてみても、あの温かい温もりは感じられない。
寝室の窓を開けると、北風が冷たく頬を掠めた。もう秋が来てしまった。こんなに時間が流れるのが早い。
「ふぁ~」
菫が実家に帰って1週間。毎日のように連絡は取っているけれど、おじちゃんとは上手くいっていないらしい。まぁそうだろうと思ったけれど。そろそろ俺も会いに行かねばいけない。
菫ひとりでおじちゃんに立ち向かえるとは到底思えない。強がってばかりいて一見気も強そうに見えるが、実は弱い女性なのだから。
「ようッ!おはよッ。彼女に家出された佐久間潤くんッ!」
だから一体何を嬉しそうに。
会社に行くと吉澤さんがそれはそれは嬉しそうにこちらへやって来た。 パソコンのディスクに向かう俊哉を睨むと、シュッと顔を隠した。…お前はデカすぎて隠れ切れてねぇんだよ。
自分が最近奥さんとの間に赤ちゃんが生まれて浮かれ気分だというのに、陰で人の不幸を笑いやがって。それに菫は家出をした訳じゃないんだ。俺があえて実家に帰らせたのだ。
「まぁーそうなるとは思ってたんだよなー。お前にあんな美人は勿体なさ過ぎる。
それでなくても潤はモテるんだから、新しい恋を探そうな?」
そして吉澤さんの中で話が大袈裟に脳内変換されている。どいつもこいつも人の不幸を嬉しそうに笑いやがって。
「別に振られたわけじゃねぇよ。それに家出した訳でもないから」