【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「おぉ…何だ強がりか?いいじゃんいいじゃん。今度合コンしようぜ?恋の傷は恋でしか癒せないって事よ」
吉澤さんが俺の肩をグイっと掴み馴れ馴れしく触って来る。その腕を強く振りほどいた。
「俺は合コンなんてしないってば。
ほら、友達伝いで吉澤さんの好みのスタイルの良いモデルさん集めておいたから、後は自分で頑張れよ」
「はぁー?潤がいなかったら女の子たちが乗り気じゃねぇだろー。
いいからいいから一緒にな?合コン参加しような?」
「だからしないっつーの!!
それより午後から撮影入ってるんだろ?俺先に現場に行っておくからな」
「潤はつれないなぁー……」
まだブツブツ言っている吉澤さんを尻目に、荷物を抱えて現場へと向かう。
この調子ならば撮影現場に行ってもある事ない事を言いふらすに違いない。それを考えるとため息が出る。ひとりひとりに説明するのはしんどい。
…大体別れたわけじゃないっつーのに!それどころか菫は毎日俺に会いたいと言ってくるほどラブラブなのに。
菫が実家に帰ったのを良い事に、おじちゃんが大倉さんとの縁談の話を強く勧めて来るのではないかと予想はしていた。それを阻止する為に先週の週末に家に出向く予定だったが、こんな時に限って新しくオープンする新ブランドの仕事が忙しくなるのである。
それに加えてウェディングドレス制作をしているもんだから、忙しい。仮縫いを終え本縫いも終えて形は出来上がったが、ここからビーズやパールをつけていく作業に入っている。
手縫いでひとつひとつつけていくもんだから、これが中々時間のかかる作業なのである。
しかし妥協も出来まい。仕事の合間を縫ってはウェディングドレスも平行して作っていた。