【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
ふたりは言い合いをしていたけれど、そのまま現場を出た。
菫と約束をしている渋谷まで急いだ。
会わなかった時間はたったの1週間弱だった。それでも会いたくて会いたくてたまらなかった。
3か月で生活は一変してしまったんだ。君がいなかった事が信じられない位。
朝から筋トレをして栄養たっぷりのスムージーを飲んでいる君がいないのも寂しいし
菫がご飯を作らないと、自分でも作る気は起きない。だから食事を抜く日も増えた。
ピアノだって菫がいなかったら部屋のただのインテリアだ。ひとりでは弾く気さえ起きないのだから。
眠る時は君を抱きしめたいし、何気ない話でも君と一緒ならば笑い話に変えられた。
人生で離れていた時間もあったというのに、再び出会って日々を共に過ごしてしまったらもう君はひと時だって手放せない存在になった。
25年間片時も離れた事がなかった想い。
平日だというのに渋谷のスクランブル交差点は人で溢れていた。まぁ当然か。それに今は丁度帰宅ラッシュの時間と重なる。
人混みを掻き分けながら前へ進んでいくと、人々が大画面の前で足を止める。その大きなビジョンの中には俺と菫が抱き合っている映像が写し出されていた。
…こりゃ思っていたよりも恥ずかしいな。本人が通り過ぎていくというのに、誰も気づきやしない。
まぁ俺自身だってこの自分だとは思えない程、実際に見るのと写真で見るのとでは偉い違いだろう。
美しく着飾ってメイクをして、光りに当たられて写真を撮るのだもの、別人になってしまうのも分かる気がする。