【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
元気、じゃねぇよ。しかし菫も恥ずかしげもなくよくもまぁ王子様だなんて言える。それは聞いているこっちの方が恥ずかしいんだが…。
「つーか帰って来たってなんで?つーかかーちゃんも舞も菫んちの前で何やってんだ?」
母が慌てて俺の方へやって来る。この人が焦ってオロオロする姿を見るのは珍しい。
けれどその母の表情を見た瞬間、直ぐにピンと来た。
まさか…舞が帰って来ているという事は…。
「潤大変なのよッ。
舞がいきなり帰ってきたと思ったらおばーちゃ…じゃなくって文江さんも一緒になって帰ってきちゃって…。
帰って来るなり篠崎の坊やに会いに行くとか言って…。」
「やっぱりばーちゃん帰ってきてんの?!つか何で菫んちに」
「ち、違うのよ?私は何も言ってないんだからッ…。ただ菫のとーさんが潤と菫の結婚を反対してるって話を電話で文江さんにしてたのッ!
それに帰って来るとは言ってたけれど、私の入院だって大した事なかったし…まさか本当に帰国するとは思ってなかったのよ!」
かーちゃん…絶対ばーちゃんに余計な事言ったね?
少しだけ睨むと途端に目を逸らし始めた。それが証拠だ。この人は話を大きくする傾向がある。
舞は舞で何やら楽しそうに菫の腕を組んで、篠崎家に入って行く。
それに続くように慌てて俺も家の中へ入る。
きっと母の事だから話を大きくしたに決まっている。ばーちゃんもばーちゃんでその気になって、おじちゃんの家に乗り込んでいったに違いない。
おじちゃんはかーちゃん以上にばーちゃんが苦手なのだ。そりゃー顔を合わせれば駄目出しの連続で、それを子供ながらに見ていて不憫に感じた事もある。