【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
先日潤との交際が認められた。晴れて私達は恋人同士。それもつかの間、何故か数日後結婚式を挙げようと父が提案をした。
開いた口が塞がらなかった。文江さんと舞も数か月日本に滞在するという事で、その間に式が見られるなんてとふたりとも喜んではいたが…。
何にしても強引な話だと思う。しかし父は1回言い出したら聞かないタイプの人間だという事はもう重々承知だ。
「俺は別にいいけどね」
「私はもっと恋人という期間を楽しみたいわ…。
それに結婚というのはお互いの良い所も悪い所も知った上で決める人生にとっては大イベントなのよ?!
それをこんな簡単に決めていい筈がないわ」
「良い所も悪い所もって…
もう25年間も一緒にいるんだ。そういうの全部分かってるだろー。
まぁ突然結婚出来ちゃうのが幼馴染の特権でもあるんだろうな。あっはっはっは」
だから何を笑っていると言うのよ。能天気な奴め。
「それにこれで堂々と一緒に暮らせるようになる」
「それは…そうだけど…」
交際を認める代わりに父が出した条件は、結婚をするまで私が実家から出ない事だった。
つまりは…私はもう1か月程しかこの家では暮らさない。
そう考えると父なりに早く潤と暮らしたい私への配慮だったのかもしれない。父が不器用な人間だというのはもう随分前に分かった事だ。
でもロマンチックなプロポーズもされてないわ…。普通は夜景の見える場所で指輪の箱を潤が差し出して…それを受け取った私はほろりと涙を流す。そんな光景を夢見ていたのに。