【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
そう言って西城さんがゲージに手を伸ばし撫でようとした瞬間、伸びた爪が彼の手の甲を引っ掻く。

その様子を隣で見ていた美麗ちゃんはニヤニヤして「嫌われてやんの、冷たい人間だっていうのが猫にも分かるのね」と言った。

西城さんは顔を真っ赤にして、ゲージの中に入っている猫に怒鳴りつけた。

「このクソ猫がッ!雪の兄弟であるというから同情心を出してやったのに!
お前のような可愛げのない猫はいつか猫鍋にしてやるからなッ!
くそッ、いてぇ……
雪の可愛らしさを見習え!」

西城さんに向かい猫はシャーシャーフーフー牙を出して威嚇し続けた。

威嚇はしていたが、体中は震えており、怒っているというよりかは怖がっているように見えた。

「先生、この子は?」

菫が心配そうに尋ねると、獣医は困った顔をして話し始めた。

この猫がこの動物病院から引き取られ、そしてまた戻ってきた経路を。

「えぇ、引き取られたのは良いのですが…一人暮らしの若い女性の家だったんです。
最初は可愛がっていたようですが、ある日彼氏が出来て邪魔になったようで…いつしか構われなくなって、ベランダに出しっぱなしにされていたらしいんですよ。
それでもう飼えないって事で再びうちの動物病院に戻ってきたんですけど…」

「そんな…酷い…」


< 313 / 321 >

この作品をシェア

pagetop