【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「コラッ!クソ猫ッ!何を菫さんにしている!
菫さん、止めた方がいい。俺が紹介しといてなんですが、こんな怒りっぽい猫は飼うのをやめた方が絶対にいい。
世の中には俺たちが飼っているような可愛らしい雪のような猫も沢山いる。
もしあれでしたら俺が結婚祝いにふたりに猫をプレゼントしよう!超高級で珍しい猫を!菫さんにお似合いの猫を用意するッ!」
「怒っているんじゃないわ…。怖がっているだけなのよ…」
傷ついた猫を見つめる眼差しはとても優しいものだった。
菫はいつも俺を優しいと言うけれど、本当に優しい人間はどっちだったか。
俺は知っている。いやこの世界中で俺だけしか知らなくていい。 君が感情表現が下手なだけで、とても優しい人だという事は。
きっと傷ついた猫を自分に重ねただろう。美しいと始めは持てはやされ、人に見捨てられる悲しさを。自分の心の傷を隠して生きるその姿を。
「菫さん、気を確かに!この暴力猫は止めておいた方がいい!」
「ちょっとあんた黙ってなさいよ。あんたが猫に嫌われる理由が分かるわ。
あんたみたいな男は雪のように誰にでも優しい猫しか育てられないけれど、菫さんや佐久間さんは違うかもしれないでしょ?」
「なッ!あんた俺を極悪非道な人間みたいに!」
「その通りでしょ。良かったわね。あんたの所に来てくれたのがあんなに優しい雪で」
「美麗!あんたは愛する彼氏をなんだと思っている!」
西城さんと美麗ちゃんの言い合いを無視するように、菫は真剣に獣医に話を聞いていた。
これはもう、飼う羽目になるだろう。何といっても一度言い出したら聞かない女ではある。あれだけペットショップで可愛らしい子猫を見ても、少しも心を動かさなかった。もう俺が何を言っても無駄だと思う。