【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

「えーちゃん、ただいまーッ!仕事疲れたぁ~。今日も可愛いでちゅねー?」

全く子猫ではないのに赤ちゃん言葉を使いたくなるから不思議だ。

俺は帰って来て、猫を抱き上げるのが日課になった。そして威嚇され、ツンと顔を背けられ俺の腕から逃げようとする。

けれど最近はひっかき傷も少なくなってきたように思える。

「潤ーえーちゃんにご飯あげてー」

ご飯を手に持った時だけ少しだけ近づいてくるようになった。


この猫に名前を付けたのは、菫。

愛称はえーちゃん。本当の名前は「えくぼ」

何でも初めて見た瞬間から気に入っていたそうだ。

真っ白に不思議な模様がある猫は、頬にも線のように茶色の模様があって
それが笑っている時の笑窪に見えたかららしい。

そして俺と同じ笑窪を持っているこの猫を、一目見た時から大層気に入ったそうだ。


潤に似ていて可愛いわ。と、どっこも可愛らしい性格ともいえない猫を優しく見つめ何度も「可愛い」と言う。

だから不思議なもんで俺も一緒に暮らし始めてこの猫が少しずつ可愛らしく感じてきた。

まさに猫らしいツンデレ。それは最初に引き取られた飼い主からの育児放棄による傷もあったのかもしれないが、素直でなくて不器用で誤解されやすい所が菫に似ていて

菫に似ていると感じたら途端に可愛らしく見えるから不思議なもんだ。

ふたりで夕食を取っている間も、えくぼはソファーに丸まってジーっとこちらを観察していた。


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