【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
菫と視線を合わせ、室内に流れ出したメロディー。
ホールニューワールド。
それを奏で始めると、えくぼは安心したような顔をしてソファーで丸まった。
その姿を見て菫と目線を合わせ微笑む。
ありがとう、私の夢を叶えてくれて――。そう菫は何度も俺に言うけれど
俺は菫の夢を叶えた訳ではない。願いを叶える力は自分自身の中にあるという事。
菫はそれに自分で気づいて、自分の夢を自分で叶えたんだ。
やっぱり俺は魔法を持っていない。けれど魔法を持っていない俺だって、君を永遠に幸せにすると約束をする。
願いはいつか魔法になるだろう。信じる気持ちを忘れない限り。
「ふふ、寝ちゃった。可愛い」
「寝ている時は天使だよな」
「あら寝てなくても天使だけど?
あなたは天使ー潤は王子様ー
ふたりとも私の所へ来てくれてありがとう」
だからよくも恥ずかしげのない言葉を吐ける。
えくぼを見つめる菫を後ろからぎゅっと抱き寄せる。
こちらを振り返った菫は、俺の頬に浮かび上がる笑窪を指で押さえて、無邪気な微笑みを向ける。
「幸せだなぁ」
ぽつりと呟いた言葉に目を細める。
「俺も菫と一緒にいれて幸せ。俺の方こそ俺と一緒にいてくれてありがとう」
「本当に優しいわね、潤は」
体を向き直し、俺の胸へぎゅーっと抱き着く。
もしも俺が優しい人間に見えるとするのならば、それは君がいつだって俺の側にいて、優しい気持ちにさせてくれるからだ。
君が自分の気づかない所で優しさを沢山くれて、俺はその優しさで心を満たし又前を向いて歩いて行ける。
俺にとって菫の存在こそが、魔法そのものなのだ。