【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

「はぁーー…」

お風呂から上がり自室へ逃げるように入ると深いため息が漏れた。

ふと窓へ目をやると、潤の部屋の明かりはついていなかった。今日は実家に帰ってきていないのか。まだ仕事中だろうか。

近頃潤はおばちゃんの為に実家へよく帰って来ている。だから最近彼の部屋の明かりがついていないか確認するのが日課になっている。

中学から離れたとはいえ、高校を卒業して潤が実家を出ていくまでは、この窓越しよく話をしたもんだ。

違う世界に行ってしまった。そうは思っても顔を合わせれば潤は昔と変わらない微笑みを私へ向けてくれたから。

「仕事しなきゃ…」

パソコンを開き、家に持ち帰った仕事をしていても、先ほど父に言われた言葉が頭を離れない。そして大地の言葉も…。

’何それ、変なの’私がずっと抱えてきて、けれど決してぶつけることはしなかった疑問を軽々とぶつけてしまえるものだから。

持ち込んだ予算の資料をまとめながらも、ため息は止まらない。

いいじゃない、結婚だって。夢はお嫁さんになる事だったんだもの。仕事は確かに好きだけど…。自分が自由な結婚を出来ない事くらい重々承知だったじゃないか。

そんな事を考えながらパソコンを打ち込んでいたら、ノックもせずに乱暴に扉は開けられた。


お風呂から上がったばかりなのだろう。髪の毛を乾かす事もせずに不機嫌そうに眉をつりあげた大地がそこにはいた。



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