【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「ちょっと、ノックくらいしてよ」
「つーかねーちゃんマジでいいの?!」
ずかずかと部屋の中に入って来たかと思えば、ベッドに腰をおろす。
「大地髪くらい乾かしなさい。風邪をひくわよ」
「うるさいなぁ、お母さんみたいな事言わないでよ。
つーかさずっと疑問だったんだけど、ねーちゃんってお父さんの奴隷?!」
…奴隷なんて、失礼な事をいう子だわ。
別に私は父に無理強いをさせられている訳でもないのに…。
「だってねーちゃん中学だって潤くんと同じ公立に行きたかったんでしょ?
大学だって音大に行きたかったんじゃないの?だってフルート好きじゃん。ねーちゃんくらいならもしかしたらフルート奏者つー未来もあったかもしれないのに
お父さんに言われるがままに篠崎リゾートに就職しちゃってさ。ねーちゃんの人生それで良かったわけ?」
あの小さかった大地がそこまで考えているとは思わなかった。
まさか私が潤と同じ中学に行きたかったという事も知っているなんて。
けれどもしも音大に行きたかったとしても、私の実力で受かっていたかは謎だし、お父さんがせっかくエスカレーター式で大学までいける学校を選んでくれたのに、それに反抗する理由は無かった。
まさかフルートがいくら好きでも音楽家になる道は険しいもの。それならば父の言う通り堅実に就職した方がいいに決まっている。
「それでいいのよ。
それにあんただってお父さんの望む学校に行って、篠崎リゾートに就職したじゃない。
私の事言えないわ」