【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

けれど、俺は何事もやってみないで諦めるのは嫌いなんだ。不可能だと思う事でも、自分の手でチャンスを掴んでいく。その過程が大切だと知っているから。

だから菫にも諦めて欲しくない。

菫がしたい事。願えば叶うんだよ――?夢は、叶う。小さな頃ふたりで何度も見たじゃないか。あの話が好きだったのは俺じゃなくて、菫の方だ。


俺はあの日言った事、本気だった。

でもそれを菫が望んでいないのならば、無理強いしても仕方がない事だ。

「なー…俊哉ー…」

「どうした、珍しく真剣な顔をして。
ほら、今度コラボする歩く人のティシャツの試作品が上がって来たぞ」

俊哉の手から、歩く人のティシャツが渡された。中々お洒落で良い出来だ。

これはとあるお菓子メーカーとS.A.Kのコラボで作ったティシャツだ。夏になると大型ショッピングモールに並ぶ予定だ。

歩く人という日本人ならば誰でも知っているお菓子のパッケージ。とてもスタイリッシュでかっこよく仕上がっている。

自分が携わってきた仕事だが、それを手にしても今日は何とも嬉しい気持ちにはなれなかった。

「俺ってどういう男だろうな」

「はぁ?!一体何の話だ?」

「結構昔からモテるタイプだとは思ってたんだけどなーーー…」

珈琲をディスクに置くと、俊哉はやっぱり熊さんみたいな顔をしてこちらを見下ろす。



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