【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
潤のおじちゃんも母に似てふわふわとした人だから、父とは仲が良い。おばちゃんは昔から物事をハッキリと言うタイプだったからか、仲が悪くは無かったが余り父と会話が噛み合っているようには思えなかった。
その父が最も苦手とするのは、潤の祖母である佐久間文江さんだ。世界的なデザイナー。彼女は男社会を生き抜いてきたような人だから、言いたい事は我慢せずに言う。
今も海外を飛び回っているようなファンキーで派手なおばあちゃんだった。…幼い頃の記憶しかないのだけど、私は文江さんの事が嫌いではなかった。
孫におばあちゃんと呼ばれるのを嫌い、文江さんと呼ばせていた。自由を愛する人で、他人にあれやこれや強要しない、強きキャリアウーマンだった。
「菫、今日のワンピースよく似合っているよ」
「ありがとう。去年お父さんに誕生日に貰ったものよね」
「ああ、菫に似合う物は私が1番分かっている」
「そうね、きっとそうなのよね……」
センスのある人だと思う。
店造りひとつとって見ても。
シンプルだけど拘りがあって、昔から私にはこれが似合うからとワンピースを買ってくれた。靴もバックもそうだ。
父に言われるから私は自分にそれが似合うと信じて疑わなかった。そしてこれから会う大倉さんも父が私と似合うと言うのなら、間違いはないのだろう。
「最近潤くんが帰ってきているみたいだな」
「あぁ、そうみたいね」
「この間の休日に菫のフルートと潤くんのピアノが聴こえてきた。
相変わらず潤くんはピアノが上手だな。才能があるのに止めてしまって残念だ」
「そうね…。潤は昔から器用だから少し教えて貰えば何でもこなしてきたもんね…」