【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
私と大倉さんの間にデザートの珈琲と共にガトーショコラが運ばれてくる。
デザートも拘っている。カフェも経営しているもんだから、食事の締めくくりであるデザートこそ余韻に浸ってもらいたい。
だからこそボヌールは、シェフの他にもパティシェも配属させている。
「デザートもとても美味しいですよ。このベリーソースにとても拘ってて」
「いや、僕は甘いものはあんまり……」
「そう、ですか」
大倉さんはデザートには一切手を付けなかった。
残すのは別に構わない。けれど、一切手を付けないのは嫌いだった。
どれだけの想いを料理に乗せて、料理人が作っているか…。料理をしている人ならば理解出来そうなものだけど。
大輝さんは実は甘い物が苦手な人だった。けれど、彼は一緒に食事に行った時物を残す不躾な人ではなかった。そんな所も彼を尊敬していた所のひとつだった。
決して大倉さんが悪い訳ではない。私とは考え方が違う人なんて、この世にいくらでもいる。
「菫さんはお付き合いしている方はいらっしゃるんでしょうか?」
「いませんけど?」
もしもいたとしたら、こんな場所には来ないだろう。
大倉さんは私へ向けた微笑みを一切崩さない。
その微笑みのまま、驚く事を口にした。
「僕は結婚と恋愛は別だと思っています」
「はぁ?」
「篠崎リゾート程大きい会社になると、菫さんも結婚は誰とでも自由に、とはいかない事でしょう」
「えぇ…それはまぁ…」