【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
舞は潤の妹だ。
現在は海外に留学し、服飾の勉強をしている。
そして潤のお母さんは、昔からとても元気いっぱいの肝っ玉お母さんだったけれど、先月から体調を壊し入院する事が決まっていた。
私も小さな頃からお世話になっている人だ。おばちゃんの体調が良くないのは少しだけ聞いていた。けれど命に別状がなく安心した所だ。
「菫も都内に出て一人暮らしすればいいのに~」
「そんなのお父さんが許してくれる訳ないでしょう?」
「菫は箱入り娘だからな~。おじちゃんも心配性すぎるんだって、可愛い子には旅をさせろって言うじゃん。
でも大地は都内で一人暮らししてるんでしょ…?やっぱり娘は特別って奴なのかねぇ」
そうなのだ。
弟の大地は大学時代から都内のマンションで悠々自適の一人暮らしをしている。
けれど25歳になった未だに私は一人暮らしの経験なし。…きっとお父さんはさせてはくれないし、頼んだ事すらなかった。
私は反抗期もなかったような娘で、両親にとって理想的な子供に違いない。
言われた通りの学校に行って、言われた通りに自分の親の会社に就職し、良い子ちゃんを演じてきた。苦痛ではなかった。両親の事はとても愛していたし、自分の恵まれた環境に不満はない。
けれど……。
通路を挟んだ窓際で笑う潤は私とは正反対のような人だった。
小さい頃はあんなに一緒にいたのに、ずっと一緒だと信じていたのに
私と潤を分けるものがあったとしたのならば、それは中学生になったあの日だと思う。