【完】Dimples 幼馴染のキミと僕

菫は小さな頃から自分の意思を持つ女性だった。正義感が強く、自分が正しいと思えば梃子でも動かないような。頑固で…一見したら融通の利かない女な訳だが。

昔からおじちゃんの前では顔色を伺うように、小さくなる癖がある。それは大人になった今でも変わりはしない。

おじちゃんは優しい雰囲気を醸し出すような人なのだが、厳しい人でもあった。

ふんわりとしている俺の父親とは気が合うようだが、母とはいまいち。デザイナーであり世界を駆けまわっているばーちゃんとは昔から反りが合わないようで、よくばーちゃんが説教していたのを覚えている。

自由奔放に生きているばーちゃんと、理性を持って生きるおじちゃんのどちらが良いかなんて知らない。そこは価値観の違いだから。けれど娘である菫の人生を全て決めてしまうのは違うと思う。

口癖のようにいつだって
’ちゃんとしなくちゃ’
’しっかりしなくちゃ’
’きちんとしなくちゃ’
もう聞き飽きた。

そこに自分を肯定する言葉は含まれているか?

ちゃんとしていなくても、菫。しっかりしてなくても、菫。きちんとしていなくても………それは菫である事に変わりはないだろう?

だけど君は口癖のように今日も同じような言葉を繰り返す。

「だって私は篠崎家の娘で…お父さんの娘だから
ちゃんとしなくちゃいけない。しっかりと生きて…きちんとしていなくちゃいけない。」

まるでそうでなければ愛される価値がないような言い方をするもんだから、カチンときた。

「そこに菫の意思は少しもないんだな。結局菫はおじちゃんのせいにして、自分のテリトリーから出るのが怖いだけだろう」


< 65 / 321 >

この作品をシェア

pagetop