【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
私は中学から大学までエスカレーター式の女学校に行った。父にそうした方が良いと言われたからだ。まさか潤と同じ公立中学に行きたいだなんて口が裂けても言えなかった。
潤のおばあ様である佐久間文江さんは、今時お金持ちにしては珍しい自由な考えの持ち主だった。
潤程のお坊ちゃまであれば幼き頃から私立の学校に通う子が多い中、潤は学区内の公立中学へと進んだ。
そして潤の両親もまた、潤や妹の舞に無理に自分たちの会社を継いで貰う事を望んではいなかった。自分の選んだ道を、自由に進んで欲しい。そういった考えを持っていた。
病気になった潤の母親もまた、どこかのご令嬢とかではなく、普通にS.A.Kの事務員として働いて潤の父親と出会い、結婚した後も普通の従業員として働き続けたパワフルな人だ。
そんな両親の下で育った潤は、高校は服飾科の入っている珍しい学校へ進み、卒業後は大学ではなく専門学校へ進んだ。
幼き頃からファッション業界の家庭で育った潤は洋服造りが好きだった。才能もあったのだと思う。専門学校で栄誉ある賞を貰い、2年間単身パリへも留学した。
そして現在はS.A.Kで働きながら、自分のアパレルブランドを持つという夢を追いかけている。
そしてS.A.Kのブランドのモデルまでこなし、ちょっとした芸能活動もかじっている人物だ。
潤は、私にとってどこまでも眩しい存在だった。鳥のように自由で、その背に羽根をつけて、自分の好きな場所に飛び回る。
私には決して出来ない生き方をしていた。