【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
4.菫■最悪なデート■

4.菫■最悪なデート■




久しぶりに潤と言い合いの喧嘩をした。

幼い頃はよくあった。下らない内容で。潤が私の分までおやつを食べた、とか。キックボードを貸して欲しかったのに中々貸してくれなかったり、とか。実に下らない子供の喧嘩だ。

けれど子供だからいつの間にか何となく仲直り出来ていた。単純な脳の構造をしているもんだから、楽しい事があれば直ぐに喧嘩をしていた事さえ忘れてしまうのだ。

でも私達ももう大人で、大人になるにつれて仲直りの方法も上手くは思いつかないもんだ。

仲直りしようと思っても、いつの間にか潤が都内の自宅に帰ってしまっていたり…。あの頃に戻れたらどれだけ素敵かしら?

子供は深い事を考えたりはしない。ただただ自分の欲求に素直に従う。私の世界。あの頃が1番キラキラと輝いていた。

願えば空さえも飛べると信じていたから。高い場所からほうきに跨って何度も飛び降りた。結局いつまで経っても空は飛べなかったのだが、いつか飛べると信じて疑わなかった。




翌週の休日。佐久間家に潤が帰っている様子は無かった。お隣の窓も閉め切られていた。

そしてこの休日、さっそく大倉さんにデートの様なものに誘われた。

私を便利な女として花嫁に迎えたいだけの男。デートを重ねるのも無駄なのだと思うが…。お互いを知る工程など、必要あっただろうか。

愛の全くない政略結婚ではないか。大倉さんに取って私は、篠崎リゾートの娘である事に価値があるだけだろう。



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