【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
家まで迎えに来てほしくない。と言った。もしも潤と鉢合わせしたらそれはそれで嫌だったから。
だから自宅から近い駅で待ち合わせをしていた。10分前に到着すると、彼は既に着ていた。あのピカピカに磨かれた外車と共に。
「さぁ、乗って」
助手席の扉を開かれて、小さくお礼を言って乗り込む。
むせかえるような芳香剤の匂いが鼻につく。
「今日のワンピース可愛いね」
「ありがとうございます」
車に乗り込んで1番に、私の何の面白みもないワンピースを褒めてくれた。
運転席でハンドルを握る大倉さんも、シンプルな白いシャツとジーンズを履いていた。シンプルな物であるけれど、分かりやすいブランド物であるのが、この人らしいと思う。
身に着けている腕時計やサングラスさえも、ブランドの主張が激しいのだ。成金にはよくありがちな事よ。分かりやすい外車を好む、全くこの人らしくて何故か笑えた。
「どこか行きたい所はある?」
「どこでも……」
「じゃあ海までドライブしようか。近くに美味しい料理屋さんもあるんだ」
うわぁーベタねぇー。
海に行って、海が見えるレストランか。
この人が考えそうなデートプランだわ。思った通りの事をしてくれる、全く面白みのない男だわ。女性がそういったものを好むと固定概念がある男の典型ね。
心で悪態ばかりついていたが、にこりと微笑みを絶やさなかった。…表情筋がおかしくなりそうよ。けれど昔は人の前で上手に笑えなかった私だけど、大人になって楽しくなくてもニコニコと笑うのは得意になった。
そして全く気分の乗らないドライブデートがスタートしてしまった。既に後悔していた。