【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
ドライブは失敗だった。
こんな事ならば自分の好みを伝えておくべきだった。
だってドライブなんて車の中でふたりきりしかいない空間。どうしてもお喋りをしなくてはいけない。特に意味のない会話を重ねて、その度に作り笑顔を作るのは苦痛そのものだった。
それならばいっそ、映画やコンサートといった絶対に沈黙を作らなくてはならぬ空間を選ぶべきだったのだ。
大倉さんは実にお喋りな人だった。お互いを知ろうといったくせに余り自分の話はせずに、流行りの物や話題の話ばかり。
いや、普通の女の子だったら大倉さんの話は楽しかったかもしれない。けれど私にとっては苦痛な時間でしかなかった。
海に着くころにはすっかり疲れていた。
決して綺麗ではない東京の海を前に、一息つけると思ったのだが…。
海に来て共に何をすれば良いのやら…。
けれど海に訪れていたカップルや家族連れは皆笑っていて、実に楽しそうなのだ。
…何でもない場所でも大好きな人と一緒ならば楽しいのかもしれない。…けれどちっとも楽しい気分になれなかったのは、私がこの人の事を全く好きではないからだわ。
そしてこの先も全く好きになれそうにもない。それは私の努力次第かもしれないけど。
「まだ少し寒いね」
「えぇ、でも日差しがとても気持ち良いですね」
「菫ちゃんは海は好き?」
「海ーー…。そうですね、好きですよ。大人になってちっとも来る機会がなかったけれど」
「俺昔からサーフィンをやっているから海は好きでさ」