【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
返事を待たずに、何故か大倉さんがうちとは反対方向へハンドルを切る。
ちょっと待ってよ!良かったら泊るなんて、信じられないわ。1回目のデートよ?それに私は男性経験がないのよ。このままのこのこ家へついていって、お酒なんて飲んでしまったら食われるに違いない。
今回のデートで心はちっとも動かなかった。それどころか嫌いな所ばかり目に付くばかり。
そんな男に処女を捧げる気になんかなれないし、そもそも強引な男は嫌いではないけど、人の気持ちなんて何ひとつ考えていないじゃない。
「む、無理ですッ!お父さんが怒るので……」
「えーだってもう25歳でしょ?平気だって、平気」
「いえ、本当に…。それに私大倉さんの事まだ何も知らないし、困りますッ!
私帰ります!帰してください!」
必死に懇願した。
そんな私に対し、大倉さんはきょとんとした顔をして、小さく笑った。
「冗談冗談。本気にしちゃって可愛いなぁ。
それにしても真面目なんだね。」
真面目かどうかは知らないけど、初めてのデートでお泊りはない。絶対にない。
私の貞操観念が固すぎるのか、それとも大倉さんが緩すぎるのかは知らないが…ますます上手くやっていく自信を失った。
けれど西城さんの事があった後だ。この縁談を私自らお断りしたら、お父さんはどんな顔をするだろう。幻滅してしまうだろうか。それとも落ち込むだろうか。
ハンドルを切り返して再び家へ向かいだす車。早く帰りたい。今日は疲れた。本当に疲れた。ストレスが溜まるとフルートが吹きたくなる。今も正にそんな気持ちでいっぱいだ。