【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
自宅に着いた途端、逃げるように車から飛び出した。お礼を言って、早くこの場から逃げ出したかったけれど、大倉さんは何故かそんな私を止める。
「この間言った事だけど、」
「え?」
「菫さんが俺を気に入らないのは何となく分かりました。あなたは俺が思っているよりも真面目な女性のようだ。
とはいえ、俺は自分の考え方を変えるつもりもないし、結婚したからといって縛られるのもやっぱり嫌なんだ。
正直に言うとお付き合いしてる女性もいるし、遊んでいる女の子も何人か…。でも菫さんだってどうせお父さんの決めた誰かといずれは結婚しなきゃいけないんだろう?
そう考えれば俺との結婚は結構ありだと思うけど。俺と結婚したら菫さんは自由だし、好きでもない男に縛られるより好きでもない男から自由にさせてもらう方がずっと楽ちんだと思うし
俺が遊んでいいように、君だって結婚してから良いと思う人がいれば自由にしたら良い。そう考えてもこの結婚は君にとっても悪い話ではないと思う」
あっけらかんと付き合ってる女性がいると宣言してしまうのは別に良いと思う。
そうか…。大倉さんと結婚しなくとも、お父さんは別の結婚相手を探す事だろう。…その人を好きになれる保証はない。
そう考えてみれば、大倉さんの言う事も一理あるのか…。でも私は彼の言うように結婚をした後は、相手を裏切るつもりはない。
でも自分好みじゃない男に一生縛られるのも嫌。…それならば容姿は嫌いじゃないこの最低な男と……。その方がまだマシなのだろうか。
下を向いて戸惑っていると、大倉さんの大きな手のひらが私の腕を掴む。
ひんやりとした冷たい手のひらだった気がする。