【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
「止めてよ。全然似てないわ。私は強い女だもの」
「そう?」
人生で初めて冒険をした。
けれど、大輝さんには好きな人がいた。
政略結婚なんて珍しい話ではないし、父も大輝さんのおじい様も私をとても気に入ってくれた。
親に決められた人であっても、大輝さんとならば幸せな結婚が出来ると信じていた。けれど、彼は私との結婚は選ばなかった。
自分が本当に好きだと思った人と結婚したい。と振られてしまったのだ。その相手はご令嬢でも何でもなかった。
もう私は、冒険をしようとは思わないだろう。
父が決めた相手。たとえ好きではなくても好みでもなくても、その人と結婚するのだろう。
共に25年間育ってきたはずなのに、目の前の幼馴染とやけに差がついた気がするわ。
ちらりと潤へ視線を向けると「ん?」と大きな瞳をこちらへ向ける。
全くなんて呑気な。…きっと人生も楽しいんでしょうね、自分の好きに生きて。
出窓から立ち上がった潤は大きく伸びをし、白い歯を見せ笑った。頬に笑窪が浮かび上がる。それは25年間ずっと見続けた光景だった。
「もう1曲やらない?久しぶりだし」
「えぇ、いいわよ。何にする?」
「’春よ来い’」
「いいわね」