私に恋する可能性
そのあとは会話はなかった
ただ駅でお互いの電車が来るのを待った
やっぱり静寂は苦痛にはならなかった
むしろ心地の良いものだった
でもそれは…きっと私だけ
先に電車が来たのは多岐くんだった
当然駅でお別れ
何も望んではない
いや…強いて言うなら…もう少しだけ一緒にいたい
そう言ったら何か変わるかなーなんて思ったけど
私の口は動かない
一方通行の関係だから仕方ない
「じゃ、この電車だから俺」
「うん!一緒に来れてよかった!また学校で!」
「…あーうん」
電車に乗り込む多岐くんの背中
本当に凄い思い出になった
…一緒に花火見れたんだ
一緒にお祭りに来れたんだ
まるでデートみたい…あ、デートか
そうだ付き合ってるんだ私たち!
電車の中に立つイケメンの横顔
そうだ私この人と付き合ってるんだ
実感すると口角が上がる
「多岐くん!今日はありがとう!大好き!!」
周りにいる人からの視線を感じたけどお構いなしで言った
電車の中の多岐くんは一度私をポケッとした顔で見て
そのあと
呆れたように笑い、軽く手を上げた
あぁぁぁぁ…
また恋に落ちるぅぅぅ