私に恋する可能性
しばらくしてポーンと車内アナウンスが入る
私が降りる駅
3駅なんてあっという間だった
すっかり恐怖は抜けて、
結構いつもの調子に戻ってきた
だからもう心臓はバックバクで耳まで赤くなっているのがわかる
正直めちゃめちゃ暑いけど、二度目があるかわからない多岐くんの温もりを堪能する
でも電車の速度は落ちていく
「…多岐くん、あの、私この駅なので」
「…送る」
…へ?
「さすがにあの後で1人で帰すわけにはいかないだろ」
頭上から響く多岐くんの低音ボイス
きゅっと心臓が締め付けられて、指の先まで血が行き渡るのを感じる
今、私ドキドキしてる
いわゆる胸キュンってやつを…してるんだ
扉が開き、多岐くんは私の手を掴んだまま一緒に電車を降りた
少ししんとする
電車が行ってしまい、ここで降りたのは私たちだけ
「…あの、多岐くん」
「ん?」
「ありがとう」
「…うん」
多岐くんの顔は見えない
だけど…みっちゃんや犬飼先生、蓮斗くんが言うような悪い人じゃない
…私はそれを知っている
多岐くんだって、私たちと同じ普通の高校生なんだから