私に恋する可能性
家までの一本道を並んで歩く
多岐くんと帰り道を歩くことなんてないって思ってた
だから…すごく不思議な感覚
多岐くんが…隣にいる幸せ
「なんであの時間に電車にいたの?」
多岐くんが沈黙を破った
「実行委員の仕事が思いの外長引いてしまって、駅までは犬飼先生が送ってくれたんですけど」
「え、犬飼が送ったの?」
そこ食いつくんだ
そんなに珍しいのかな
「はい」
「ふーん…」
「あの、多岐くんはなんでですか?」
「俺は普通にダチの家にいた」
そうすか
その友達には感謝しなければ
「…あの時間は、結構危ない人多いから気を付けろ」
「うん、ありがとう」
思い出すとゾッとする
だけど、その恐怖をも隣に多岐くんがいるという事実だけで上書きできてしまうくらい
私は都合が良いようで
「多岐くん」
「なに?」
「好きです」
「……うん」
なんか、久しぶりに言った
今までみたいに軽くは言えない
私の思いはそれほど確実に大きくなっていた