私に恋する可能性



「あ、私の家ここです」


「あ、そう」


ありゃ、暗い


お兄ちゃんまだ帰ってきてないのかな


「家誰か居んの?」


真っ暗な家を見上げて多岐くんが首を傾げた


「いや、いないっぽいですね」


「両親とも?仕事?」


あーいや


「私、両親はいないので」


「…は?」


本日二度目だな、この会話


「兄です。でもまだ帰ってきてないみたいですね」


仕事長引いてるのかな


「あの、本当にありがとうございました。多岐くんがあの電車に乗っていてくれてよかった」



思えばすごい確率だ

あの時間、同じ電車に乗っていて、私を見つけてくれた


やっぱり世の中には想像もしないことが起こりうる


だったら多岐くんが私を好きになる可能性だってないわけじゃない



それから


「多岐くんが庇ってくれた時…俺の彼女って言ってくれて嬉しかった」


ボソリと言った私の言葉を聞き、顔を見た多岐くん


「私本当に多岐くんが好きだよ」


他の人が多岐くんのことをどう言ったって

この気持ちは変わらない


多岐くん、多岐くん

私はもうずっと多岐くんに恋に落ちていくばかりだよ


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