私に恋する可能性



「あーくそっ」


…へ


急に多岐くんが前髪をぐしゃぐしゃっとして大股で進み出る


「来て」





腕を掴まれたと思ったら何か答える間も無く

ぐんっと引っ張られる



「あ!ちょ、ひなたっ!」


「あー茂木はこっちー」



蓮斗くんの私の名前を呼ぶ声が響いてるけど

多岐くんは私の手を引いたまま進む



「多岐くん?どうしたの?ねぇってば」


「いいから」


良くないぃぃ!

仕事ぉぉぉ!!



多岐くんに逆らえるはずもなく、ひたすら引っ張られる

どっかの空き教室に入って、壁に背中がぶつかる


バンッ!と

扉が閉まったのと、多岐くんが私の顔の横の壁に両手をついたのが同じタイミングだった



目の前には整いすぎた多岐くんの顔

左右を多岐くんの手に、前方は多岐くんの体に、後方は壁に

まあ、どこにも逃げられない体制


い、いわゆる壁ドォンってやつだけど


キュンキュンするより混乱が勝る



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