私に恋する可能性



あーもう…



「多岐くん」


思わず手を伸ばす



「好き」






無意識にその言葉が溢れた



ただ、言わなきゃって思った


今目の前にいるこの人を、どうしようもなく好いていることを


伝えたかった





「ねぇ…俺の話聞いてた?」


え?


「危機感持てって言ったでしょ?」


「…えっと」


「今のはひなたが悪い」


え、ひ、ひなっ


「目閉じて」


えっ


「閉じて?」




何をしようとしているのか

分かっていたかもしれない


だけど

分かった上で目を閉じた



「っ…本当…」



ゆっくり

この前よりも長い時間


合わさる唇


もう深く考えるのはやめよゥ


少しして目を開けると


何の感情が浮かんでいるのか、わからない顔をした多岐くんが大きなため息をつく



「あーもう…俺やばいよね」


「わ、私もやばい」


赤くなりすぎた顔をペチペチと叩く



「明日…一緒にいるから」





文化祭…一緒に回れるの?


「本当に?」


思わず乗り出して多岐くんを見る


「…回りたかった?俺と」



いつの間にか壁についていたはずの手が私の腰あたりに回っていて


私と多岐くんの間はほとんど無い


く、苦しい


胸がズキュンズキュンしてる



「…回りたかった…です」



多岐くんを見上げる


今は…本当のこと言ってもいい気がしたから



「…じゃあ絶対茂木とは行くなよ」



「うん」



なんかもう

ゲームとか


どうでもいいや



そのくらい…


この時間が、暖かい




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