私に恋する可能性



「なあ」




呼び止められるとは思わなかったからぎこちなく振り向く


「やめたほうがいいと思うけど」


「やめる?」


「多岐と付き合うの」





「どうして?」


「昨日変な宣言してたけど、多岐は絶対お前みたいな奴を好きにならないから」


なっ!?


「あとでグズられたりしても迷惑だし、とっとと諦めて早めに引けよ」


引くってのは諦めろってこと?


「どうせかっこいいからーとかバカみたいな理由でイチャイチャしたいだけだろ」


なんだなんだ、めっちゃ喧嘩売ってくるよこの人

それになんか勘違いしてる!


「私は別に多岐くんの外見に惹かれたわけじゃないし、イチャイチャするのが目的でもないです!
私が多岐くんに恋したのはちゃんと理由がありますから!」


まあ当然こんな人には話さないけど!


「多岐くんが私を好きになる可能性は皆無ではないです。
私は多岐くんがくれたチャンスを自分から捨てたりなんかしない。あなたに何を言われようが多岐くんにフラれるまではやめないから」


キッと名前も知らない多岐くんの友達を睨む

間部ひなた。売られた喧嘩は買うタイプ


「うっぜ。調子乗ってんじゃねえよ」


なんだとこの野郎!

ハゲてしまえ!


「一筋縄でいかないことくらいわかってますよ!そのくらいの覚悟はありますから!
それでもやめられないくらいの想いですから!」

フンスッと鼻を鳴らす

いやそうな目で私を見たあと、その視線をぐるっと回した

「さっさとフラれて泣けばいいのにクソ女」


わっ

クソ女って言った!

こいつ悪口言った!


言い捨てて乱暴に去っていく背中


べーっだ!



はぁ、多岐くんの友達に嫌われてしまった


でもあれは仕方ない


だって先に喧嘩売ってきたのあっちだもん


私悪くないもんね


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