私に恋する可能性
そっと教室の扉を開けた
夕日の差し込むオレンジ色の教室
このクラスもみんな帰ったようで
がらんとしている
その教室の窓際一番後ろから2番目
机に突っ伏しているその姿を見た
なるべく音を立てないように中に入る
吸い寄せられるように寝ている多岐くんに近づいた
おー…あの人気者が爆睡している
私が前の席に座っても気付かない
この寝顔見たことある人いるのかな
いや、いるに決まってるか
だってあの多岐くんだし
多岐くんが私に見せた初めてってあるのかな
…私は初めてばっかだよ多岐くん
人をこんなに好きになったのも
連絡先ごときであんなに必死になったのも
キスを、したのも
多岐くんが突っ伏して寝ている机に肘をついた
少し顔を近づけてその整った横顔を見る
この人が好き
めっちゃ、好き
『だったら作ります!多岐くんが私に恋する可能性を!』
…作れただろうか
私は多岐くんに可能性を…与えられたんだろうか
無防備に寝息を立てる
「…多岐遥」
私の好きな人