私に恋する可能性




「…何?間部ひなた」





突っ伏したままの状態で目があった

少し笑みを含んだそれが私を捉えていた


起きてたんですか


「寝込みでも襲いに来た?」


いつかの保健室のように言った


んー…


「うん」


多岐くんを見て少し笑って見せた


「へえ」


片方の眉が上がる


というか


「来いって言ったの多岐くんでしょ」


「んー遅いよひなた」


「実行委員代表も大変なの」



寝起きなのか多岐くんのいつもよりも柔らかい声

それに返す、私のいつもより落ち着いた声


静かなこの空間に交わるように溶ける音



「なんで呼んだの?」


「…ちゃんとした理由なんてないよ」





「会いたかったから呼んだ」


寝起きだからこんなこと言ってるのかな

それとも、私だから言ってくれてるのかな


あんまりそんな言葉を使われると、いくら私でも勘違いしてしまう


思わず多岐くんから視線を外した



「…ひなたは俺のことが好きだって言う割には欲がないよね」


え?


「会いたいとか触れたいとか、他の奴に触られたくないとか」



…それは違うよ多岐くん


私は馬鹿だから細かいことは考えられないの


だから


「私はそんな小さな欲が何個もあるんじゃなくて、すごく大きな欲が一つあるだけなの」


とんでもない欲張りだよ、私は



「…何?」


多岐くんの綺麗な目が私の目を真っ直ぐに捉える


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