私に恋する可能性



とはいえ正直一切期待はしてないけどね



連絡先の時も、一緒に帰ろうって言った時も必ず『NO』が最初の答えだったから


今回は別に粘るつもりはない


だって花火大会は、そりゃ普通の彼氏彼女は一緒に行くだろうけど


私たちは普通じゃない


普通の彼氏彼女だったら好きの矢印はきっとお互いからお互いに向かって伸びている


だけど私達は違う


私から一方的に多岐くんに向かっての矢印があるだけ


私よりか友達と一緒に行った方が楽しいに決まってる


だから粘らないつもり


多岐くんの楽しい方を優先するのは当然だから


でも…やっぱり彼女として、多岐くんを好きな女の子として

花火大会に誘うっていうイベントは実行したい


柄にもなく少し緊張をして多岐くんに向き直った




「た、多岐くん…あの」


「んー?」


ソファから顔をこっちに向けた


「まだだいぶ先の話なんだけどね…えっと…」


うわあ、私人生初体験じゃない?


男の人を何かに誘うのって


「えっと…その」


「うん、何?」





なかなか言い出せない私にかかる
思ったよりも優しい声のトーンとタッチに思わず多岐くんを見上げた



「えっと…」


「うん」


なんか、待ってくれてる?

…気がする


は、早く言わなきゃ

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