私に恋する可能性
翌日
家にあった青色がベースで紫や白の朝顔が咲いた可愛らしい模様の浴衣を一時間くらいかけて着る
こんなにてこずるとは思わなかった
浴衣って着るの大変なんだなぁ
髪は頑張って上に持ち上げてお団子にする
顔の横から少し髪を垂らしてヘアアイロンでゆるく巻く
こんなに時間かけておしゃれすることなんてなかなかない
普段は正直こんなに時間かける気力はないし、めんどくさい
だけど今日は違う
好きな人に少しでも可愛く見せたいから
可愛いって思ってもらいたいから
最大限の努力をする
女の子ってそういうもの
日々可愛いを更新したいと思うのは女の子の当然の心構えだもの
普段は絶対しないようなメイクにまで手を出す
ナチュラルにしかできないけどアイラインで目元を強調し
赤目のリップを塗る
自分でもあんまり見慣れないような自分
出来た
今の私の最大限の『可愛い』だ
多岐くんに伝わるかな
青い浴衣を揺らしながら自分の部屋から階段を降りていく
「お兄ちゃん!」
リビングでなぜか放心状態だったお兄ちゃんに声をかけた
「え…ひなた?」
「どう?似合ってる?」
「その浴衣…母さんの?」
「…うん。私の部屋のクローゼットにあったけど多分そうだと思う」
「…そっか。似合ってるよ。すごく」
!!
やった!
「じゃあ行ってくるね!」
「ひなた門限は10時だからちゃんと守れよ?お、男の子と2人きりなのか他に友達がいるのかは知らないけど気をつけてね?気をつけてね?他に友達いると思うけど」
なんで二回言ったんだろ
それに私は2人きりだと思っておるのだが…
言わないでおこう
「わかった!気をつけるね!行ってきます!」
どこが心配そうな兄を背中に軽い足取りで駅へ向かう
ああー!
楽しみだな!