私に恋する可能性



花火大会会場に向かって並んで歩く


並んでるよ

私多岐くんの隣歩いてるよぉ!!


「…ん?間部さん?」


!!


「わっ!すみません!つい見惚れてました!」


「正直だねー前向いてないと転けるよ」


は!それはダサい!

前向こう!


「ていうか、浴衣着てきたんだね」





「そ、そうです!やっぱりせっかくの花火大会なので!」


「ふーん」


……え、そ、それだけぇ!?


多岐くんは何事もなかったかのように前を向いてしまった


ぬぅくそぉ!

甘かったかぁ


可愛いなんて言ってもらえるかなって思ってたけど…

花火大会来れただけでも奇跡なんだから高望みはよくない!


さ!さ!切り替えだ!

ウジウジしてる暇はない!


「あれ?メイクもしてるの?意外だな、そんなのしないタイプかと思ってた」


えぇ!?

切り替えようとした矢先、再びその話に戻ってしまい慌てる


「そ、そうですか?あ、でも確かに普段は滅多にメイクしないですね」


今日は特別だ


「今日だけ?」


「はい!多岐くんに久しぶりに会うので!気合入れてきました!」


馬鹿正直に言ってしまったがまあいいや

本当のことを言うに越したことはない


「俺?」


ふぃ?

俺、とは?


「俺のためにメイクしてきたの?」



「当たり前じゃないですか!私が多岐くんのこと好きなの忘れてないですよね?
少しでも良い自分で会えるように磨いてきたんですよ!恋する女の子はみんなそんなもんです」


フンっと鼻を鳴らした私を見る多岐くん


なんじゃ?


「へー…俺のためにそんな格好してきたんだ」





「どうかしました?」


「いや…案外気分がいいもんだなって思って…」






なんのこと?

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