新 不倫
そのまま署の玄関まで平山さんを見送る。
トボトボと歩く後ろ姿が見えなくなったところで、隣の関本主任にバンッと背中を叩かれた。
「星野!お前もちったぁ刑事らしくなってきたな。」
先ほどの振る舞いについて、
怒られなかったという事は、
関本主任も同じように感じたのかな・・?
「平山さんには・・【アリバイが無い】という事になりますね・・。」
「ちょっと調べてみるか。
仮にも奥さんが亡くなったっていうのに、えらい淡々としやがって。」
「そうですね・・・。」
「この夫婦・・ひょっとしたらかなり冷め切ってたのかもしれないな。」
産科の速水先生の話を聞く限り、少なくとも半年前まではそんな事は無かったはずだ・・。
不妊治療を頑張って、
妊娠中も奥さんを支えて・・。
やはり・・胎児の“死”によって、二人の関係に何らかの変化が起きたのかもしれない・・。
「ヨシトく~ん!」
「うん?・・・ってブッ!!」
後ろから長くんに呼ばれて振り返った・・途端、顔面に予期せぬ衝撃が走った。
「痛ったぁ・・・!!」
「ヒュー!ストライ~ク!」
なんでこんな物持ってるの?
とツッコミを入れながら、
いきなり投げられ、キャッチ出来ず見事に顔面直撃したゴムボールを拾い上げる。
「こんな感じで出来た傷みたいだったすね。」
「え・・・?」
「ほら、平山さんの顔っすよ。
こんな柔らかいボールだったら何ともないと思うけど、
自分から何かにぶつけちゃったっていうより・・何かが飛んできて当たったみたいな、
不自然な腫れって感じ。」
「あ~なるほど・・・
・・ってそれが何か・・?」
「・・??それだけっすけど?」
相変わらず自由奔放な天才鑑識官にゴムボールを思いっきり投げ返した。