新 不倫
「さすがの星野君も、今回ばかりはストレートに信じるわけにはいかないでしょう?」
「・・・はい・・。
今までどうして僕達に姿を見せてくれなかったのか・・。
どうして平山コウスケ逮捕の方針が固まったこのタイミングで現れたのか・・。
まるで・・僕達の捜査をイタズラに妨害してきたようで・・
正直、心証は良くありません・・。」
「嘘が上手い人間には2つのパターンがあります。
1つは99%本当の事を言って、
1%の核心部分だけ嘘をつく。
真実の中に1滴だけ嘘が混じるので、
見分けるのは容易ではありません。
但し、この技術は素人が簡単に習得できるものでは無いので、
大抵は私たち刑事の目は誤魔化せません。」
「・・・・・・・・。」
「厄介なのがもう1つのパターン。
【何も喋らない】人です。
ベラベラと喋ってボロを出すぐらいなら、
真実の部分もひっくるめて完全黙秘する。
これでは“見破る”とか、
“揺さぶる”以前の問題です。」
「クミコさんがそのパターンに該当するって事ですか・・。」
「突破口は“表情の変化”を見逃さない事ですが・・
死者は簡単に姿を消せるから私達の方が分が悪いです。
先ほど君が指摘した、
“何故今ごろになって?”という点からも、
平山クミコさんが何かを隠しているのは明らかです。
ただ、自分の言いたい事だけ伝えて、
こちらとの対話は拒否する・・
今回の死者はかなりの強敵ですね。」