新 不倫
1ヶ月、2ヶ月と経ってようやく分かったけど、
美術室に来ては窓をボ~ッと眺めている田中君は、その外を行き交う生徒や先生、
学校の敷地外まで目を凝らしてその道を通る人をずっと観察していた。
そうやって“生身の人間”の動きや表情をインプットして、
それをいつも鞄に入れて持ち歩いているノートに・・
「フフッ、面白いね。
続きが気になる。」
「・・・・・・・・・・・・。」
黙々と自分と向き合う時間の合間、
不定期で読ませてくれる田中君の“漫画”も、楽しみの一つだった。
中学の時はずっとイラストや短編漫画を描いてきたそうで、
高校では1年に1本長編作品を書いて雑誌社に応募する、
という目標を立てていると教えてくれた。
見せてくれる“マンガ帳 vol 1”では、
[魔界からの力を手に入れた大人達が支配する世界の中、本当の自由を手に入れる為に天界からの力を授けられた少年少女達の戦い]
を描く、能力者バトル物の[お釈迦様!]を執筆している。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
私はあくまで趣味の延長というか、将来の仕事に繋げる事までは考えていなかったけど、
それでも、水彩画を得意とする元木先輩だけでなく、
一生懸命漫画と向き合う田中君からも、
確かな刺激を貰えていた。