新 不倫
「ゴホッゴホッ!」
目の前で涙を流す女性に対して、言葉を飲み込んでしまった僕の代わりに・・
再び、慈悲の無い豊川さんがクミコさんに一歩近づいた。
「あ~・・前置きが大変長くなりましたが、肝心のあなたを殺害した犯人についてです。」
『・・・・・・・・・・・。』
「ご安心ください。
ご主人は犯人だとは思っていませんよ。」
『・・え・・・・。』
「仲間の皆には、“第一発見者”の平山コウスケに改めて事情聴取するよう依頼しました。
だから署まで任意同行してもらいに、
ご自宅へ向かってもらいました。」
『・・謀ったんですか・・?』
「嘘はついていません。
“第一発見者”は“重要参考人”ですから。」
『・・・・・・・・・・・。』
「私達は、あなたの『夫は犯人じゃない』という証言を信じる事にしました。
ご主人の、“公園に着いた時、妻は死んでいた”という証言も信じる事にしました。」
『・・・・・・・・・・・。』
「星野君に感謝してください。
私の相棒は私と違って、
呆れるほど性根の優しい、
死者に寄り添う子ですから。
最後は半ばゴリ押しで、“信じる”という彼の意見を採用する事にしました。」
『・・・・・・・・。』
「また、こちらとしても、
結果的にあなたの証言のおかげでご主人の誤認逮捕は避けられましたので、
その点は感謝が尽きません。」
『・・・・・・・・・・。』
「さて・・・残る可能性は1つです。
岸本ナオさんがあなたを殺害したのか否か。
正直、私も星野君もまだ結論が出せていません。証拠がありませんからね。」
「あ、豊川さん。」
「はい。」
「大事な確認を一つ飛ばしてます。」
「・・・ゴホッゴホッ!
・・そうでした。すみません。」
「・・クミコさん。
これだけは教えてくれませんか?」
『・・・・・・・・・・・・。』