新 不倫
最終章
1
最終章
「・・星野・・マジ?」
「マジです。今、似顔絵担当の江口巡査に協力を要請して、
豊川さんが通訳になって被害者からの証言を基に、犯人の似顔絵を作成しています。」
「おいおい・・。
なんだよこの展開は・・。」
関本主任が漏らした言葉に、
僕も激しく同意する。
ようやく・・ようやく被害者から得られた犯人の情報。
それはやっぱり旦那のコウスケさんでもなく、
かと言って不倫相手の岸本さんでもなく、
そうかと思えば今までの事件関係者でもなく・・
まさかの“名無しの権兵衛”だった・・。
「つまり、旦那と岸本ナオの為に、
“死にたい”、“消えて無くなりたい”と思っていた奥さんの前に、
都合良く、見知らぬ殺人者が現れたって事か?」
「はい・・。この期に及んで全くのデタラメを言うとは考えられません。
クミコさんの証言には信憑性があると判断しました。」
「それが・・“無抵抗”と“黙秘”の理由でもあったのか?」
「です・・。結果的に自分の願いを叶えてくれた、どこぞの誰かさんに対して、
恩義を感じたそうです。
抵抗することなく、
その男の殺意を受け入れて、
願いを叶えてくれた恩人が警察に逮捕されて欲しくないと・・。」