新 不倫


「どうかな岸本さん?描いてみない?」


「え・・・私がですか・・?」


「うん。・・あ、そういえば言ってなかったけど、

コンクールがあるブラスバンド以外の文化部って、基本的には6月で引退なんだ。

だから私がここに来るのも今月いっぱいだから。」


「じゃあ・・余計に先輩が描いたほうが・・。」


「ううん。私は昨年と一昨年描かせてもらったし、

これ以外にもこの2年でたくさん思い出と納得いく絵が描けてきたからもう十分だよ。」


「・・・・・・・・・。」




「・・・・中西先生、ポスターって色鉛筆画でもいいですよね?」


「・・zzz…・・あ・・はい。
何でも大丈夫です。」




「あんまり“活動”っていう活動が無い美術部の貴重なイベントだからさ、

後輩にぜひやってもらいたいな。」



咄嗟に、窓際に座る田中君の方を見た。


「・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・。」


私の視線を感じたのか、漫画を描いていたノートからこちらに顔を向け、

無言で会釈をする・・
ので私も軽く会釈する。


多分、“こういうのは岸本さんの方が向いてる”みたいな事を言ってあらかじめ断ったのかな。


「あ、じゃあ・・・・
ぜひ・・やってみたいです。」



挑戦してみたい気持ちが強くなったと同時に・・


“ポ、ポスター!?おいおいどこに貼られるんだ?会社のみんな連れて見に行くから!”


もしお父さんが生きてたら、きっと喜んでくれたんだろうなって・・

ちょっとだけ哀しくなった。


















 




 




 



 







< 19 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop