新 不倫


月明かりに照らされた帰り道。

やがて俺達の眼前に立派な桜の木が登場する。


昼に見る鮮やかなピンクと違って、

夜は夜で・・まるで白く光っているみたいで綺麗だった。



「・・・・安部さん・・・。」


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・なに・・?」


「・・・・・・・・・。」



“俺と付き合ってください”

本来はこのセリフを口にするのが世の流れだけど・・。


手はまだ繋いでないし、
キスもしていないし、
体を重ねる事も遥か未来だけど・・


ようやく分かった。

俺と安部さんがこんなにも意気投合できた理由。

映画や食事の誘いに安部さんが乗ってくれた理由。

心地良い安心感と、
居心地の良さを感じていた理由。


・・安部さんに恋をした理由。


それは2人とも“子供が好き”という・・

何物にも代えがたい共通する“想い”を持っているからだ。




「俺と結婚してください。」



月明かりで白く光る桜の木の前。

安部さんの目を見て・・
俺は、“交際0日婚”を申し込んだ。






第2話 完










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