新 不倫


「それから、例えば“泣く”という動作は、悲しい時だけに出るものではありません。

人は“嬉しくても”、
涙を流す生き物です。


君が描く漫画はとても面白く、キャラクターも個性があって惹きこまれます。

だからあとはいかに表情に感情を乗せられるか。

この技術はテクニックだけではありません。
“作者自身”の経験値が左右されてきます。」


「・・・・・・。」


「どうですか?

窓を見ているだけでなく、
こうして自分の足で・・

行き交う人達と同じ立場になってこの景色を楽しむのも悪くないでしょう?

それと同じで、君が魂込めて描くキャラクター達に感情を持たせたいなら・・。」


「・・・・・。」


「君自身も・・高校生活でたくさん吸収できるといいですねぇ。」



私と田中君の前を歩く中西先生は・・

いつもコックリコックリ居眠りしている姿なんてウソみたいで・・

私達の足りない所を的確に指摘して・・

でも決してイヤな気持ちにさせない温かな視線を送ってくれる・・“先生”だった。



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