新 不倫


思わず・・口から出てしまった。

いつもくたびれたYシャツを着て・・

“職員室だと堂々と寝れないから”
って椅子に座ってコックリして・・


たまに話しかけると気の抜けた返事をする先生が・・ほんの少しだけど筆を握って・・


ほんの少しだけ修正されたはずなのに、
魔法みたいに全体が纏まった。


「岸本さんは随分と哲学的な問いかけをしてきますね。

私はただの40過ぎたオッサンです。」


「・・・・・・・・・・・・・。」



見た目はもっと上の年齢に見える、なんだか全体的にくたびれた人なのに・・


「あ、じゃあ早速市役所宛に返信作ってきます。

今日はそのまま職員室にいますので、
鍵だけお願いしますね。」



この前の散歩。
出してくれたアドバイス。
向けてくれる穏やかな視線。

鉛筆を握った瞬間に入ったスイッチ。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


“格好良い”


静かに美術室を出ていく・・
そのくたびれた後ろ姿を見て、

確かに・・心の奥がズキッとした気がした。


















 




 




 



 







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