新 不倫
“悲しい時に元気が出る曲を聴くのは逆効果だ。悲しい時はバラードを聴いたほうが心は落ち着く”
昔どこかのネット記事で読んだ文章が、ふと頭に浮かぶ。
昨日までの俺だったら間違いなく、
“大丈夫”、“頑張ろう”・・
それに類した言葉を掛けていた。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・スッ・・スッ・・。」
“言葉”は要らない・・確かにそう感じた。
さすっていた背中から、
側頭部へと位置を変える。
胸へと引き寄せた後、
そのままずっと夜を明かした。
カーテンから朝陽が漏れ出す頃、
背中の痛みと共に、いつの間にか2人ともそのままフローリングの床に横になっていた。
「・・・・・おはよう・・。」
「・・・・・・アハッ・・おはよ。」
腕の中で・・今まで迎えた朝の中で一番至近距離での挨拶を交わして笑い合う。
“もうちょっとだけ頑張る。
頑張るよ。”
言葉は交わさなくても、涙を出し切って戻ったその目の力強さを確かに感じて、
トーストとハムエッグの準備に取りかかった。
第4話 完