彼は記憶の残り香を嗅ぐ
「あれ なんだろう?」
会社帰りのOL秋元琴海は自宅の賃貸マンションエントランスで足を止めた。足元に綺麗な赤い布で作られたお守りが落ちている。マンションの誰かが落としたのだろうか?琴海はそれを拾い上げた。胸辺りまで伸びたダークブラウンの髪が春もとっくに過ぎた夕方の風に揺れる。次のシーズンは梅雨かぁと少々憂鬱になりながら彼女は階段を登り始めた。
305号室 ここが琴海の住む部屋。玄関ドアを開けると奥から声がした。
「おかえり 琴海」彼氏の新城直樹だ。この部屋で4年前から2人で暮らしている。
「ただいま 直樹、今日の夕飯何?」
「帰るなり飯の話か?今日はロールキャベツ作ったよ」180センチ強の長身を少し屈ませて直樹がキッチンの鍋を指差す。
「やったー、大好物!すぐ着替えてくるね」満面の笑みを浮かべて琴海は部屋の隅にバッグを置いてサイドボードの上にさっき拾ったお守りを置いた。
「これ どうした?」直樹がお守りを手に取って尋ねる。
「あ、それエントランスに落ちてたの。このマンションの人の落とし物かもしれないから 明日
管理人さんに届けようかと思って」着替えながら寝室から答える琴海。
すると直樹はお守りを少し顔に近づけて一つ深呼吸をした。
「お婆さんの手作りの合格祈願のお守りだ」「持ち主は女子高生で名前は 千鶴…かな?」
直樹がそう言うと部屋着に着替えた琴海が「あ、5階の吉沢さん家の千鶴ちゃん?」と尋ねる。
「ああ吉沢千鶴ちゃんのお守りだ」断定する直樹。
「じゃあ私ちょっと届けてくる!」上着をはおってバタバタと琴海は出て行った。
「相変わらずフットワークが軽いな」低めの声でポツリと呟き直樹は食器棚から深皿やサラダボウルを取り出した。彼の趣味は料理。おかげで琴海はいつもこの恩恵に預かり美味しい思いを出来ている。その代わり後片付けは彼女の仕事で掃除洗濯は2人でやるとゆう決まり。
しごく普通のカップルと言いたいところだが 直樹には変わった力があった。
物の記憶を嗅ぎ取る能力。

どうゆう事かと言うと 物を手に取りまず深呼吸、すると音、声、映像などが脳裏によぎり持ち主が分かったり状況が読めたりする。
本人はちょっと変わった体質位にしか捉えていないが、油断すると近場にある物達が
煩瑣いので仕事は在宅のプログラマーで人との関わりはなるべく少なくしている。

ロールキャベツを皿に盛り付けていると琴海が戻ってきた。
「やっぱり吉沢さん家の千鶴ちゃんのだったよ!お婆ちゃんのお手製で失くしたって
落ち込んでたんだって」「すごく喜んでたよ!」直樹が黙って頷くと琴海は
「あ、以前見たことがあったって誤魔化しといたから!心配しないで!」と付け加えた。
直樹自身は能力の事を苦にしていないが宣伝して回る物でも無いし面白がって群がって来られるのも嬉しくない。
「すっごく美味しかった!ありがとね!」夕飯をペロリと平らげ 洗い物をしながら
琴海が朗らかに言った。それからコーヒーを入れてリビングのソファで直樹に寄り添い
「私達の出会いも落とし物がきっかけだったよね。」と懐かしそうにささやいた。
「お前が大学の食堂に落とした小さな鏡だったな」答える直樹。
「あのミラー、とっても気に入ってたから直樹が持ってきてくれた時すごく嬉しかった」
「なんで持ち主が分かったのか散々疑われたな」
「でも疑って私が直樹に付き纏って 仕舞いには付き合う事になったんじゃん!」
「もう6年も経つんだな」直樹も懐かしげに微笑んだ。

しかし 2人が付き合うようになって半年程で琴海は直樹が不思議に思えてくるようになった。
付き合って初めてのクリスマス、琴海は直樹の好きそうな皮の財布を贈り物に選んだ。もちろん
とても喜んで貰えたのだが 直樹からの贈り物を開けた琴海は思わず悲鳴を上げてしまった。
高校生の頃からずっと欲しいと思っていた某ブランドのポーチだったからだ。
欲しい物を恋人にねだる性格ではないし やはり高価な品なのでいずれ社会人になったらお金を貯めて自分で買うつもりだった。今まで友達とも話題にした事はなかったのに色もサイズもバッチリ
欲しい品。死ぬほど感激したと言っても過言ではなかった。
そんな風に何か贈り物をもらう度 必ず欲しかった物が出てきたり、何か頼み事をしたいと思っている時に口に出す前にしてくれたり。
『まさかこの人私の心が読めるの?』『いやまさか超能力者?』と出会った頃のように疑い始めた。もちろん彼の事は大好きだったが 好きな故、より知りたくなってしまい悶々と日々を送っているとあるデートの日2人で公演を歩いている時に 直樹がふと立ち止まった。
「どうしたの?疲れた?」琴海が振り返ると
「心配するな。俺は琴海の心は読めないから」
「ただ琴海の持ち物達が主張してくるだけだ」と直樹が告白してきた。
「は?私の持ち物達?主張?どうゆう意味?」混乱する琴海。
「物の残り香が分かるんだ」直樹の言葉が理解出来ない琴海。
ハテナを飛ばしまくる琴海に直樹は詳しく説明し出した。「小さい頃から物を手に取って深呼吸するとその物の持ち主とか状況とかが頭の中に浮かぶ」「最初は偶然母の手袋をいじっていて気がついた。 その手袋は父と母が結婚前に父から母への始めての贈り物で母がとても大切にしているのが見えたんだ」「母にその事を言うと『あんたが産まれる前の事なのに何故知ってるの?』って
不思議がられた」
「それってやっぱり超能力者?」驚く琴海に直樹は続けた。「そんな大袈裟な物じゃない。
ちょっと特殊な体質程度で。でももし気味が悪いと思うなら…」
「思わないよ!目が良いとか耳が良いとか鼻が良いとかの延長線上だって事なんだよね!」琴海はすぐさま否定した。今まで不思議には思っても気味が悪いなどとは思わなかった。
「ありがとう直樹 話してくれて嬉しい。益々好きになったかも」
「いつも分かる訳じゃないんだ。ただ油断したり逆に思い詰めたりすると近場の物達が主張してくる。」「とゆう事は 私の前では油断したり思い詰めたりしてる訳?」
「思い詰めるとゆうか…大事にしたいなといつも考えてしまって…」
琴海は直樹に抱きついた。公園の中には他にも家族連れやカップルも居たが気にならなかった。
直樹は一瞬固まってからそっと彼女を抱きしめた。
あの頃からずっと2人は仲の良い恋人同士。


翌週の水曜日、琴海が仕事から帰るとリビングから談笑している声が。
「もう来てたの?譲」「お帰り 姉ちゃん。お邪魔してまっす!」
今日は琴海の弟、譲が夕食を食べに来る約束だった。大学二回生の譲は電車で20分位のM市に
住んでおりたまにこうやって顔を見せに来るのだ。この姉弟は年は六つ離れているが顔立ちや髪質など良く似ている。つまり譲は女性である姉に良く似た甘いマスクなのだ。身長は直樹よりは少し低いが長身には変わりなく女の子には結構モテるらしい。しかし本人は至って真面目な性格で
余程好きにならなければ女の子とは付き合わないと言っている。

直樹が琴海の分のコーヒーを入れてテーブルに置いて「今晩の飯は譲もいるから焼肉にするぞ」
とキッチンを指差す。バットの上にすでにカットされた野菜や具材が乗っていた。
「良いなぁ姉ちゃん。料理上手な彼氏で。姉ちゃん食いしん坊だからぴったりじゃん!」
「うるさい!あんたの方こそどうなの?去年彼女と別れたって言ってたけど、新しい彼女は?」
「そんな簡単に見つからない。勉強もバイトも忙しいし」耳の上辺りをポリポリ掻いて譲が口を尖らせた。
「あっそう、お母さん達にはちゃんと連絡取ってるの?」
「こっちから連絡しなくても母ちゃんが2週に1度は電話してくるよ」
姉弟がたわいもない会話を続けといると直樹が
「そろそろホットプレート用意しろ。暖まったら肉からどんどん焼いていけ」と肉やら皿やらを
運んできた。「あ、俺ビール買ってきたよ!直さんの好きなやつ!」譲が冷蔵庫からビールの
6缶パックを取り出して来て夕食が始まった。

「あー旨かった!どうもご馳走様でした。あ、後片付け俺がするから置いといて!」そう言って
譲は皿を纏めようとしたが「良いよ 後片付けは姉ちゃんの仕事だから、もう9時回ってるし
あんたは帰りなさい」琴海が促した。
「またいつでも来いよ。お前も姉ちゃんに似て良く食うから気持ちが良い」と直樹が見送った。

琴海は譲をマンションのエントランスまで見送って「いつも言ってるけど身体には気をつけてよ
何かあったらすぐ知らせてね」と譲の背中をポンと叩いた。
「姉ちゃん、あのさ…」
「何?」
「いや、あのさ姉ちゃん達 結婚とか考えてないの?もう直さんも姉ちゃんも26歳だろ?」
「まだ26歳!人の事行き遅れみたいに言うな!」
「あ、ごめんごめん ただそうなったら良いなぁと思って!」曖昧に譲が笑った。
「ま、いずれはどうとかなるでしょ。あんたは人の事より自分の事考えなさい。そろそろ就活だって始まるんでしょ?」
「うん じゃまた電話するから、バイバイ姉ちゃん」
駅の方に歩いて行く弟の後ろ姿を見送って琴海はふと軽い違和感を覚えたがその時はそれが何なのか分かりはしなかった。




それから半月ほど経ったある天気の良い土曜日、直樹と琴海はリビングのソファに腰掛けどこかに出かけようかと相談していた。
「人の少ない所が良いよね?」コーヒーを片手にスマホを見ながら琴海が聞くと
「油断しなきゃ大丈夫だからお前の行きたい所で良いよ」と直樹。
「うーん、どこが良いかな?」悩んでいると琴海のスマホが鳴った。「お母さんだ」
「もしもしお母さん どうしたの?」琴海の両親は飛行機で2時間かかる遠方に住んでおり月に2度程は定期連絡が来ていたが今日はいつもの電話ではないらしい。
「え?譲? うん半月位前にご飯食べに来たよ。」
「は?連絡が取れない?十日以上?」琴海の声が段々不安げにかわっていく。
そして直樹の方を向き「ごめん直樹、今日譲のアパートに行ってみても良い?」と聞いた。
「何かあったのか?」電話を終えた琴海に直樹が聞くと「なんか譲が一週間以上消息不明らしいの」「お母さんも全く連絡が取れなくて大学やバイト先まで尋ねたらしいんだけど何も分からないから様子を見に行ってくれないかって」そう言いながら琴海はスマホで譲に電話をかけてみた。
「ダメ…通じない」不安になる琴海。
「M市なら電車で20分位だ、行ってみよう」直樹がソファから立ち上がった。


譲はM市のK駅のある街でアパートを借りて大学に通っている。
駅から歩いて20分程で譲の住むアパートに2人は着いた。2回建ての学生用アパートで譲は201号室
を借りている。ドアの前に行きチャイムを押すが返事はない。
「譲!姉ちゃんだよ いないの?」声を掛けてもやはり返事は無かった。
「琴海、鍵持ってるだろ 開けろ!中で倒れてたりしたら大変だ!」
「分かった!」琴海が預かっていた合鍵でドアを開ける。「譲?入るよ」再び声を掛けながら2人は
部屋へはいっていった。
静まり返る室内、誰の姿も見当たらない。キッチンと六畳一間の部屋は散らかっている訳でなく
かと言って整然としているでもなく とにかく異常は表してはいない。
「いったい何処に行っちゃたんだろ?」心配そうな声で琴海が呟くと直樹が「あれは何だ?」と
キッチンの隅を指差した。
少し大きめの段ボール箱に何やら開封されていない箱や手紙のような物が詰まっている。 
「何だろう?プレゼント?」琴海が中から一つ箱を取り出して眺めてみた。
「彼女からの贈り物とか?」直樹が尋ねると琴海は「譲は去年彼女とは別れたって言ってたし新しい彼女が出来たとも聞いてないよ」と答えた。
「手紙の方は?」琴海がピンクや水色でレースの飾りが付いた封筒を開けてみた。「ごめん譲 非常事態だから勝手に読む!」その場にはいない弟に謝って目を通す。
《愛しの王子様へ》
今日もお仕事お疲れ様でした。
凛々しく働く貴方はとてもとても素敵です!
王子様にぴったりのドレスシャツを見つけましたのでどうぞ受け取って下さい。
いつか一緒に舞踏会に参りましょう。その日を夢見て待っています。
ああ本当に愛しています。私の王子様。いつか約束の場所で永遠の愛を誓いましょう!

溢れ出る愛を込めて~~~また明日も何か贈り物をお届けします。お楽しみに!

「げっ……何これ? 王子様って譲の事?何?ドレスシャツ?舞踏会?は?」
手紙を読み終えた琴海は混乱した。
「探っても良いか?」直樹が贈り物の箱を一つ手に取って尋ねた。「うん、お願い」
琴海が混乱した目のまま答えると彼は箱を顔に近づけて深呼吸。目を閉じ数分してから口を開いた。
「これを玄関前に女が置いて行ったみたいだ。30代くらいだが何かヒラヒラした…
ゴスロリ?みたいな格好の…」「あと譲の嫌悪感も感じる。困っている風な」
「えっとゴスロリ年上女に譲が迫られてた……って事?」少し冷静さを取り戻した琴海。
直樹は他の箱や手紙を手に取りながらこう続けた。
「全部同じ人物が持ってきたみたいだけど 名前が2つ聴こえる……カヤとかヒナとか」
「まさかストーキングされてた?」琴海が心配そうに顔を歪めた。
「他の物も探してみよう 財布やスマホがないか確認してみろ。」直樹の言葉で2人は部屋中を
探ってみたが財布もスマホも見つからず手掛かりのような物は無かった。
「しょうがない、譲のバイト先に行ってみよう。駅の近くのファミレスだから。」
琴海の言葉で2人は部屋を出た。


土曜日だけあって店は賑わっている。客として入った2人は注文を取りに来たウェイターに話しかけた。
「お忙しいところすみません。秋元譲の姉なのですが弟の事で…」
「あ、秋元のお姉さん?彼ここのとこずっと欠勤してますよ」弟と同年代に見えるウェイターが
答える。
「何か変わった様子とかありませんでした?困り事とか悩み事とか」
「自分には思い当たる事はないです」とウェイター。琴海が溜息をつくと
「でも秋元と中の良い緒方って奴なら何か知ってるかもですよ」
「緒方…さん?」
「その人の連絡先 分かりますか?」直樹が聞くと「そいつも前にここでバイトしてたから ラインなら分かりますよ。呼び出してみますか?」是非とお願いするとウェイターの彼は一旦店の奥に
引いて行った。
数分後、ウェイターは戻ってきて「今から緒方がここに来るそうです。15分位待っていて下さい」
と伝えてくれた。

「緒方って琴海は知ってるのか?」コーヒーを一口飲み直樹が聞く。
「私は聞いた事ないけど大学には中の良い子が何人かはいるみたいだったかな」琴海はコーヒーに
砂糖とミルクを入れかき混ぜる。「譲…何処にいるのかな?何かおかしな事に巻き込まれてなきゃ良いけど…」ふいに琴海は一緒に夕飯を取った日に見送った弟の後ろ姿を思い出した。
今考えればあの時感じた違和感は譲が自分に何か言おうとしていたのではないかと思ってしまう。
『あの時もっと話をしてれば……』
「琴海」気がつくと直樹が琴海の手をそっと包んでいた。「きっと大丈夫だ」直樹の落ち着いた声で琴海の気分は少し浮上した。「ありがとう、直樹がいてくれて良かった」

しばらくすると緒方と名乗る男がやってきた。黒い髪を短めにカットした普通の大学生とゆう感じの男子。
「緒方です。秋元君とはゼミで一緒で親しくなってお姉さんが隣市にいらっしゃる事も聞いていました。」
「わざわざすみません。譲の姉の琴海です。こっちは恋人の新城さん。」
「それで、あの、弟の事なのですか ここのところ連絡が取れないしアパートにもいないようで…」
琴海がそう言うと緒方はテーブルの上で手を組んで「俺も心配してたんです。大学にもバイトにも来ていないようで…電話もずっと通じない。」と深刻な面持ちで返してきた。
「秋元がお姉さんに相談してみると言っていたのですが、聞いていますか?」
「え?何を?」
「彼、なんか年上の女性に待ち伏せされたり後をつけられたり 手紙や物をアパートの玄関前に置いて行かれたりするって困ってたんです」
「あ、部屋にあったやつ!…でも何も聞いてないわ…」また琴海は不安になる。
「譲はその女性にストーキングされていたのか?警察には?」直樹が緒方に尋ねた。
「一応相談には行ったみたいですが 実害が無いので被害届は出せなかったと。」
「その女性を君はみたことがあるかい?」直樹が話を進めると緒方がジーンズの後ろポケットからスマホを取り出して「2度見ました。その時遠目だけどこの写真を」と見せてくれた。写真には
建物の影に隠れるようにゴスロリ系の服を着た2人の女性が写っている。
「2人?」琴海が写真を覗き込んで呟くと直樹が「カヤとヒナだろう」「この服装も間違いない。 
部屋にあった手紙やプレゼントの主だ」と。
「新城さんはこの2人を知っているんですか?」緒方が驚いて尋ねる。
「いや、もちろん会った事もないが 特徴的な2人だし名前も分かっているから探せるんじゃないか?」直樹が琴海の方を向いて促した。「この2人が今回の件に関わっていると…?」琴海はまだ
写真に訝しそうな目を向けている。
「取り敢えず 緒方君 この写真こっちのスマホに送ってくれるか?」緒方から写真を送信して貰って3人は店を出た。

緒方と分かれて琴海と直樹はK駅の繁華街に向かった。直樹がスマホをいじりながら何か調べている。「どうする?今日のところはいったん家に帰る?」琴海が尋ねると「いや、琴海 ちょっと
買い物のフリしてこい」直樹がスマホを見せなら言った。
「この駅の周辺にロリータ系の服を扱っている店が5件ある。」
「あ、店の客にあの2人がいるかもしれないって事?」
「譲のストーカーしてたんだからしょっ中ここにはきてたはずだ。可能性はあるだろ」
そう言って2人はまず1番近い店に立ち寄ってみた。
「いらっしゃいませ」レースやフリルの溢れる商品の中 これまたレースにまみれたファッションの若い店員が話しかけてきた。
琴海はこの手のファッションには全く興味がなかったが「あの…この人たちが着ているのと同じ物を探しているんですが」と緒方がくれた写真を店員に見せてみる。
「あ~、残念ですがこの服はうちの商品ではありませんね。似たような物をお探ししましょうか?」
店員が申し訳なさそうに答えると琴海の後ろから直樹が「この写真の服、どこのブランドかわかりませんか?」と聞いた。店員は写真をマジマジと見ながら「多分…ラヴィアンの物だと思います」
そう答えてくれた。

店を出ると直樹は歩きながらスマホで『ラヴィアン』の事を調べ出した。
「東口のファッションビルに一店入ってるな。本店はS区みたいだが…」
「とにかく行ってみよう!」
《ラヴィアンK店》で琴海はさっきと同じように店員に写真を見せて尋ねてみた。すると店員が
「あら、このお2人は暮林様の御姉妹じゃありませんか?お知り合いなのですか?」と答えてきた。
琴海はドキリとしながらも「カヤさんとヒナさん」と返してみた。
「お知り合いなのですね。このお写真の商品は限定物でして現在は取り扱いがございませんが、
何か他にお見繕いいたしましょうか?」にっこりと笑みを浮かべて店員が勧めてきたが「ありがとう、また寄ってみます」琴海が答えて2人は店を後にした。

「まさかのビンゴ!?暮林姉妹だって!」少し興奮気味な琴海。「琴海、もう一度譲のアパートに行くぞ」直樹が歩き出した。

「またここに来てどうするの?」アパートの鍵を開けながら琴海が直樹を見上げると彼はすぐ
キッチンの隅の段ボールのところに行って「もう一度これを調べる。琴海はSNSやTwitterとかで姉妹を探してみろ。何か出てくるかもしれない」と座り込んだ。
琴海は言われた通りスマホで思い当たる検索ワードを色々入れて探してみた。
「あ!これ!そうかな?『かやひなエンジェルダイアリー』!Instagramで可愛い服とか小物を
紹介しまくってる!」本人達も顔出ししておりなかなか美人な姉妹だ。Instagramの写真を次々と開きながらふと、琴海は指を止めた。
「ねぇ、これ後ろ姿だけど」琴海が直樹の方へ走り寄ってスマホを見せてきた。見覚えのある
路地を歩く後ろ姿の男性。「譲だな、他には?」「他にもちょくちょくある!どれも顔は見せてないけどバイト中のやつとかアパート前のやつとか…これ全部隠し撮りだ!コメントには王子様とか
書いてるし!」「どうしよう!!譲がこんな女達にロックオンされてたなんて!」騒ぎ出す琴海に
「落ち着け。とにかく今日は家に帰って、色々整理してみよう」直樹はそう言って彼女の肩を抱いた。

家に戻ると時間はすでに20時を回っていた。作り置きのカレーで夕飯を済ませてコーヒーを入れ
2人はリビングのテーブルについた。直樹がメモ用紙を持ち出して「相手の姿や苗字が分かってからもう一度あの手紙や贈り物を探ってみたらもう少し情報が出てきた」「まず名前は暮林香夜子と暮林比奈子 年齢は30前後 家は欧風の豪邸で譲のアパートからそう遠くはない。」メモ用紙に箇条書きしながら説明した。「凄い!そこまで分かったの?」今度は琴海がスマホを片手に続ける。「私はInstagramの投稿をじっくり読んでみた。《K駅付近で理想の王子様発見》で始まってそれからずっと譲を付け回してたみたい。」「あと、ちょくちょく《N県の素敵な教会》ってのが出てきて《いつかはここで素敵な王子様と永遠の誓いを》とか書いてる」「ねぇ、これって…」少し青ざめる琴海。
「状況が揃いすぎてる。でもまだ確証はないから とにかく暮林姉妹を探してみよう」直樹はそう言って後ろのサイドボードからノートパソコンを取り出し何か調べ出した。琴海は頭を抱えて
「お母さんに何て言おう…」と困り果てたが直樹が顔を上げて「お母さんには警察に捜索願いを出して貰え。何かあった時その方が警察も早く動いてくれるかもしれない」と促した。「うん」琴海はスマホを持ち上げて実家のナンバーを表示させた。

明るい日差しが窓から差し込んで譲は目を覚ました。英国風の広い部屋、天蓋付きの大きなベッド。譲は大きなため息をついた。『いったい何日経ったんだ?』二週間程前 姉の家で夕食をご馳走になった数日後ファミレスのバイトの深夜シフトを終えた帰り道に『後ろから背中にもの凄い
痛みが走ってうずくまったところで頭を殴られた…』『目が覚めた時にはこのベッドの上で鎖に繋がれてた』右足を少し動かすとジャラリと太い鎖が音を立てる。根元の方は大きなベッドの足元に
括り付けられていてとても引きする事は出来ない。部屋にはバスルームもトイレも付いているので
それらはなんとか使えたが鎖はドアにも窓にも届かない長さになっていた。
『まったく…こんな事になるなんて…』途方に暮れているとノックの音が聞こえた。
「おはようございます。譲様 朝食をお持ちしました。」銀のトレイに料理や飲み物を乗せて女性が
部屋に入ってきた。年の頃は30前後 黒地のワンピースの上にフリルがたくさん付いた白いエプロンを付けている。「今日はとても良いお天気 日の光がキラキラしてすごく素敵」うっとりと女が言う。
「えっと…香夜子さん…でしたっけ?」譲が不安げに話しかけると女は顔を輝かせた。
「私の名前を呼んで下さるなんて!どうしましょう!」
「いや…その俺はいつになったら帰して貰えるのかな?」
「どうしましょう!比奈子ちゃんに知らせなきゃ!比奈子ちゃん!比奈子ちゃん!」
香夜子は叫びながら部屋を出て行った。
「勘弁してくれ…」譲は再びため息をついた。おそらく十日前後、この部屋で鎖に繋がれ 代わる代わるやって来る2人の女の戯言に付き合わされている。香夜子と比奈子とゆう姉妹らしいが
数ヶ月前からストーク行為をされていた。何度も止めるように注意をしたがどんどんエスカレートしていき毎日のようにアパートの玄関前に手紙やプレゼントを置かれ辟易していた。姉に相談しようと思っていたが幸せそうな姉とその恋人に余計な心配をかけるより自分自身で解決しようと思っていたのだが この始末である。
『どうしたものか…』ここがどこかも分からない上にとにかく部屋からは一歩も出られない。
今のところ命の危険は感じていないがあの姉妹はどうにもおかしいし何をされるか分からない。
譲は三度ため息をついて頭を抱えるしかなかった。

朝9時には琴海と直樹はK駅に着いていた。なぜか直樹の指示で2人とも|フォーマルな服装をして
まず書店に立ち寄ってゴスロリファッション誌を一冊購入。「本当はお前もこうゆうヒラヒラ着てた方がいいけど」と直樹が勧めたが「嫌よ!全然似合わないし、だいたいああゆう服ってブラウス一枚で何万もしたりするじゃない!」琴海が断固拒否。
「それで これからどうするの?」
「タクシーに乗る」直樹は琴海の手を引いてタクシー乗り場に向かった。
数台客待ちしているタクシーの先頭車両の運転手に声をかける。
「すみません、M町の暮林邸に行きたいのですが」すると運転手はすぐに「ああ、あの大きな豪邸
ですね」と答えてドアを開けた。タクシーに乗り込んで琴海は小声で直樹に食い付いた。
「何でM町って知ってたの!?」直樹も小声で説明する。「M町はここいらで一番の高級住宅地だから。あんな服を姉妹揃って着てるんだから当然裕福な環境にいるんだろうし、視えた家も豪邸だったから、唯の推理」「それから今日俺達はさっき買った雑誌の編集者で暮林姉妹に取材許可を貰いに行く設定だから、それっぽくしろよ」
「へ?」琴海はちょっと目を丸くしたが、とにかくあの姉妹に近づかなければ譲の事は何も分からないと思い慌てて買った雑誌をペラペラめくってみた。

5分程でタクシーは目的地に着いた。全体的に白い欧風の豪邸。洒落た外柵に囲まれ広い玄関の隣にはこれまた広い駐車スペースがあった。今は一台だけ黒のジャガーが止まっている。
「よし、行くぞ」直樹がインターフォンを押した。
「どちら様ですか?」スピーカーから中年女性らしい声が返ってきた。
「こんにちは。我々は《月刊GothicRose》の者です。こちらのお嬢様方のファッションがSNSなどで大層人気なので是非一度取材をさせて頂きたく参りました」直樹がそれらしい真っ赤な嘘をつく「あら、お嬢様方はこのところずっとお留守ですよ」スピーカーから返事が返り玄関が開く。
「雑誌の方たちですって?」50代位のエプロン姿の女性が出て来て興味津々とゆう感じで聞いて来
「香夜子さんと比奈子さんはご旅行ですか? 今日はご両親は?」すかさず直樹が尋ねると
「今日は旦那様はゴルフ、奥様はお茶会。お嬢様方は10日程前から別荘に行かれてますよ。」
どうやらこの女性は家政婦らしい。
「別荘ですか?こちらのお宅はご自宅も素晴らしいし別荘もさぞ豪華で素敵なのでしょうね?」
直樹が琴海の方を向いて目配せして見せた。琴海は慌てたが勤めて落ち着いた口調で「是非!
その素晴らしい別荘でインタビューを!」と家政婦に詰め寄ってみた。
「あら、でも私はN県のK町にあるって事くらいしか知らないわ 行ったこともないし」家政婦が残念そうにそう言った。
すると直樹は横目でチラリと横の駐車スペースを見て「あちらの車はどなたの?」といきなり車の話を切り出した。琴海は訳が分からないので黙ってきいていたが家政婦は「あれは上のお嬢様、香夜子さんのですよ。今回は比奈子さんの赤い車で出かけられたみたいですから」と。
「香夜子さんもあの車で別荘に行かれたりしてました?」直樹が尋ねる。
「ええ、あのお二人は働いてもいませんから、しょっちゅうご自分の車で別荘に行ってますよ」
家政婦は少し呆れたような口調で答えた。
「しなやかで美しい香夜子さんにぴったりの車ですね。少し見ても良いですか?」直樹がそう頼むと「見るくらいなら構わないでしょ」と家政婦は駐車スペースへの柵を開けてくれた。
直樹は車の近くまで進んでフロント部分にそっと触れ目を閉じ深呼吸をした。さすがにここまで
来ると琴海も察して邪魔にならないよう少し後ろで見守る。
「ありがとうございました」しばらくすると直樹は家政婦に礼を述べて2人は暮林邸を後にした。
足早に歩く直樹を小走りになりながら琴海は訪ねた。「何か分かった?」
「車の記憶は割と良く分かる。暮林の別荘は例の教会の近くだ。」
「例のってInstagramに上げてたやつ?」
「手紙に書いてあった約束の場所ってのも多分その教会だろう。とにかくレンタカーを借りてN県に
行こう」直樹は普段は仕事で部屋に篭りがちだが一旦動き出した時の行動力は凄い。
正午過ぎ、2人はN県に向けて出発した。

N県KS町の外れにその別荘は建っていた。えんじ色の屋根にハーフティンバーの柱や梁が剥き出しになった白い壁。敷地は広く庭にはたくさんの樹木が植えられている。二階建ての大きな別荘は
一階部分が居間と厨房、娯楽室などで二階は寝室とゲストルームになっているらしい。
その一階の居間で2人の女がソファに座ってお茶を飲んでいた。
「香夜姉様、ここに来てもう10日以上経つわ。そろそろ王子様に求婚して欲しいのだけど」
腰まであるような茶髪を指ですきながら細身の女が言った。
「まぁ比奈子ちゃん、私だって今朝やっと名前を呼んで頂いたばかりなのよ」ややぽっちゃりしたやはり長い髪の女がおっとりと答えた。
「でも、ぐずぐずしていると誰かが嗅ぎつけてやって来るかもしれないし、さっさと3人で教会で
誓いをたててしまいましょうよ」姉の香夜子に比べて比奈子の方は早口できつめの喋り方をする。
2人は数ヶ月前に街中で落とし物を拾ってくれた秋元譲に2人一緒に恋に落ち運命を感じてしまった。
裕福な家に生まれ何不自由なく育って来た姉妹は欲しい物は手に入るのが当たり前で当然この男子もすぐにそうなると思って名前や住所など、個人情報を興信所に調べさせた。そして彼の通学路や
バイトの行き帰りなど会える機会を狙っては足繁く通ったのだが一向に恋の進展は無かった。
「譲様はとても純情な方。ご自分からは言えないのよ きっと」姉妹は勝手な思い込みを重ね手紙やプレゼントも毎日届けたが何度かは譲本人から「もう やめてください」と言われてしまった。ところが「女の私達に負担をかけるのが心苦しいのだわ。何てお優しい方でしょう。」とまたも
おかしな解釈で舞い上がる。ただでさえ世間知らずな深窓の令嬢が2人も揃っているのだから半端ない。しかも2人の両親は常に仕事や付き合いに忙しく姉妹は幼い頃から物質的な贅沢だけを与えられ
その他の面では放置されて育って来た。健全な情緒や思考は育まれず自分達中心の世界だけで生きてきた歪んだ箱入り娘。一般的な常識や行動理念などは彼女達の中には無かった。
「こうなったら譲様をあの教会にお招きしましょう!そして私達を花嫁にしてもらうの!」どちらかがそう言い出し深夜のバイト帰りの譲を後ろからスタンガンで襲いバットで殴って気絶させ拉致して来た。
「ここまで来てしまえばすぐに私達に求婚して下さると思ってたのに…」姉の香夜子がため息をついた。「今まで好きになった人達もいたけどみんな少しの贈り物で向こうから告白してきたに…」
くよくよする香夜子に比奈子はソファから立ち上がって強い口調で「もう!ぐずぐずしてる暇なんてない!私も姉様もふたり一緒に好きになった方なんて初めてなんだから!これは運命以外の何物でもないの!教会に行って誓いを立てましょう!今すぐ!」と叫んだ。
「比奈子ちゃん、そうよね!絶対的な運命だものね!分かったわ 教会に行く準備をしましょう!」

時刻は午後3時を回っている。直樹が運転する車はようやくKS町に到着していた。
「ナビだともうすぐ教会だよ」助手席で琴海が直樹に伝える。「よし、じゃあ付近を走るから
えんじ色の屋根で柱が漆喰の上に剥き出しになってる建物を探せ」直樹にそう言われて琴海は
車窓から周りの建物を探し始めた。この辺りは別荘地だけあって建物が密集している事はない。
程なくして「あった!右の方!」琴海が見つけた。
目当ての建物に近くなると2人は車を降りて足早に歩き出した。周りには新緑の木々がさざめきながら立っている。綺麗な場所だった。
建物の入り口付近にたどり着くと、玄関前に真っ赤な車が止まっている。
「あの車が妹のやつだろう」直樹が言うと「譲、ここに居るのかな?もう乗り込んでも良い?」
と琴海が鼻息を荒くしている。___と、その時玄関ドアが開き、白いドレスに頭には長いヴェールを
被った女性が出てきた。
「わっ!花嫁が出てきた?」琴海と直樹が近くの木の影で固唾を飲んでいるとドアから続いてもう
ひとり真っ白なウェディングドレスを纏った女性が出てくる。そしてその女性の左手に引っ張られるようにやはり白いタキシード姿の男性が出てきた。
「譲!!」琴海は叫んで玄関前に飛び出した。「あんた何やってんのよ?」弟に向かって叫ぶ。
「あ、姉ちゃん!」譲も琴海を見て叫んだ。近くで見ると譲の右手は花嫁姿の女の左手と手錠で繋がれている。「ちょっとあんた達、弟に何してくれてんの?」琴海がふたりの花嫁姿に視線を向けると香夜子が「まぁ、お義姉様ですか?わざわざ式に来てくださったのですね」とおっとりと
のたまった。「はぁ?式?」琴海が呆気にとられているとその隙に比奈子が赤い車の中から何かを取り出して琴海の方へ向けようとした。「危ない!姉ちゃん!」譲が叫ぶと同時に比奈子は後ろから直樹に取り押さえられた。首と右手首を押さえられ手にしていたスタンガンが地面のタイルに落ちた。「譲!誘拐されてここに連れてこられたんだな?」比奈子を押さえたまま直樹が聞くと
「そうだよ!ふたりと結婚しろとか訳わからない事言われて!」譲が答えると手錠で繋がったままの香夜子が慌てて比奈子が落としたスタンガンに手を伸ばそうとした。「ふざけんなっ!」琴海は
スタンガンを左足で遠くへ蹴飛ばした。「取り敢えずその手錠外して、それから警察を呼ぶ」
「そんな…」琴海の言葉に香夜子はへなへなと崩れ落ち「どうして…?運命の方なのに…何故結ばれないの?」と泣き出した。琴海は香夜子の前に膝を曲げて屈み込み「運命ってさ、お互い両方が感じて初めて成立するんじゃないの?片方だけに訪れるもんじゃないでしょ」と諭したが香夜子は
めそめそ泣きじゃくるままだった。比奈子の方は直樹に取り押さえられたまま何かをぶつぶつ呟いていた。

しばらくして地元の警察署からパトカーがやって来て全員、事情聴取と言う事で署に連れて行かれた。被害者で捜索願いも出されていた譲の証言がほぼ通ったようだが香夜子と比奈子は意味の分からない事を言い続けていてラチがあかなかったようである。
だが結局その日は連絡先を警察の方に渡して、琴海達3人は帰る事になった。譲はケガこそ無い物の
精神的にはかなり消耗していたので後日病院に行くように助言された
帰りの車に乗り込むと譲はすぐに後部座席で寝入ってしまった。「やっぱり大分疲れてるみたいだな。なるべく静かに走るか」直樹が譲を気遣った。
「直樹、ありがとうね。せっかくの週末も潰させちゃって」琴海が助手席から礼を言う。
「琴海の弟の一大事に週末も何もないだろ」車を発進させて2人はほっと息をついた。辺りはもう
真っ暗でおそらく家に着く頃は日付が変わっているだろう。
高速道路を走る車の窓に遠くの街から夜景が宝石のように揺らめいた。その煌めきを見ながら
琴海がつぶやく。「運命の相手かぁ…」すると直樹が「琴海は俺に運命感じた事あるのか?」と
尋ねてきた。「いきなり何!?」「そう言う直樹はどうなのよ?」琴海はわざとそっぽを向いて
尋ね返した。
「俺は出会った時から感じてる」直樹の答えに琴海はおかしな顔をする。不覚にも涙が出そうになり堪えたから。「私もきっと一生感じ続けてる」声が少し震えてしまったが何とか言えた。
「じゃあ俺達のは本物の運命だな」直樹が静かな笑顔を見せた。琴海も直樹の方を向いて笑った。
この一風変わった彼氏が大好きだった。いつかは結婚もするかもしれない。でもそれ以上に今側に
いてくれることがこの上なく幸せだと思った。












< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop