エリート御曹司と婚前同居。 〜人助けしたら、契約結婚させられそうです〜
……消えてなんて、くれない。だから怖くて認めたくない。
認めてしまったら、もう元には戻れない気がする。
「自分に嘘ついて自分の気持ちを押し殺してても辛いだけだよ。ちなみに……美唯の好きな人、私が知っとる人?」
「絵梨が知ってるか分からないけど……五十嵐麗央って人、igarAshiの御曹司なんだけど」
「は!? 御曹司!? しかもigarAshiって、五十嵐麗央ってさ……専務取締役のでしょ? しかも次期社長だよね? この前雑誌の特集で出てたよね?」
私は彼女の言葉に頷くと、「うわ、すごーい!! 」なんて言いながら興奮していた。
「でも、どこで出会ったの? 会社倒産してから? ハウスキーパーってもしかして五十嵐家なの!? 」
「まぁ、ね。ベリーヒルズのレジデンス内の五十嵐麗央さんの本人の部屋だけど……その人と一緒に住んでる、かな─︎─︎」
「え!? あの、レジデンス? あのセレブしかいないって噂のあのっ? えっ、すごい!!」
絵里は驚いている。まぁそうだろうな、嫁入り前の娘が異性とひとつ屋根の下で暮らしているなんて……。
しかもベリーヒルズビレッジのレジデンスに住んでるなんてね。
「あはは……」
空笑いしていれば、周りがざわつきだした。
「なんか騒がしいね? ……芸能人でもいるのかなぁ?」
芸能人には、興味ないけど。
でも、よく聞けば“イガラシさん”“レオさん”と複数聞こえる気がする。私、やっぱり……変なのかもしれない。
幻聴までするようになっちゃったのかな……。