エリート御曹司と婚前同居。 〜人助けしたら、契約結婚させられそうです〜
麗央さんのお父様は、テーブルの上に分厚い封筒を置いた。
「……それは手切れ金でしょうか? 」
「そうだ、君はお金に困っているんだろう? 麗央と別れてくれたら住む場所も仕事も探そうじゃないか」
それって、麗央さんをお金で売るって言っているようなものだよね……?
「お金は受け取れません、それに住む場所も仕事も探して頂かなくて結構です」
「……」
「ですが。1日だけ、時間を下さい……麗央さんとは別れます。だけど、彼にはお金は喜んで頂いたとお伝え下さい。」
彼はハッとして驚いていたけど、私が別れると言ったからか安心の表情をして「お願いします」と先にお店を出て行った。
彼が見えなくなって、涙が溢れてきてどうすればいいか分からなくなる。どうしたら、止まるんだろう。
「おかわり、いかがですか?」
「あ、りがとうございます……」
しばらくして……私も店から出るとマンションに戻った。
ちょうど明日は、契約終了日だ。朝、麗央さんを見送ってからマンションを出よう。
沢山タッパーにおかずを作って冷蔵庫に入れておこうかなと思って料理に取り掛かる。彼が美味しいと言ってもらえたものと好物を沢山作った。
これだけ作れば数日は大丈夫だ、後は彼の婚約者に作って貰えばいい。
もう、これで私は用無しだ。幸せだったなぁ……
今夜は彼に悟られないようにしないと。