エリート御曹司と婚前同居。 〜人助けしたら、契約結婚させられそうです〜
第五章 君から離れて。
「美唯ちゃん、上がっていいわよ」
「あ、はい……ありがとうございます。じゃあお先に失礼します!」
もうあれから─︎─︎─︎……1年経った。
私は、とある田舎町の飲食店で働いている。正社員ではなくアルバイトとして、だけど。
「美唯ちゃん、賄い食べて帰りなよ」
「はい! いただきます」
ここはファミリーレストランで賄い付きで食費が減るから助かる。
伝票に【まかない】ボタンを押し、ミートパスタを押した。
「朝比奈ちゃん一緒に賄い食べていい? 」
そのまま自分で賄いを作り休憩室へと向かった。椅子に座ると、もう一人入ってきた。
「あっ! お疲れ様です、水元さん。どうぞ」
水元(みずもと)さんは、大学2年生。高校生の時から働いているこの飲食店のベテランさん。
ここは従業員の人も優しくて働きやすい職場で、たまたま従業員募集していたところだった。住んでいるのも、安い少し古いアパートが運良く見つかった。
一応は、今までの蓄えがあったからなんとか普通に暮らせている。都会にいたままなら、絶対ホームレスだった気がするけど……。
「……朝比奈ちゃんって、なんでこの街に来たの? 」
「え?」
「だってさぁ、こんな田舎町に何の希望を持って来たのかなぁって……田んぼと海しかないほとんどコンビニないし」
ここに来たのはたまたまだった……本当に。
誰も私を知らない場所に行きたくて、ただただ電車に乗った。そしたら綺麗な海が広がってて……思わずその駅で降りた。