エリート御曹司と婚前同居。 〜人助けしたら、契約結婚させられそうです〜
第六章 やっぱり君が好きだよ
武智さんに強制的に連行された私は、外に待機していた麗央さんに車に乗せられてしまった。
“もう逃げれないよ、逃さないよ”とでも言うかのように……麗央さんは、私の腰に手を回すから逃げる事なんてできない。
「………」
「………」
車内では沈黙が続いていて、とても気まづい雰囲気が流れている。
どちらかが話さなきゃ沈黙を破ることは出来ないけど……私は何を、何から話せばいいのかわからない。
「……麗央、話したいことあるんじゃないの?」
その沈黙を破ったのは……運転している武智さんだった。
「……何のために、俺が一生懸命にスケジュールを立て直したかわからないだろ? それに、ここまで迎えに来れたのは誰のおかげか考えてくれないかな?」
「あぁ、ごめん。そうだな……」
武智さんに謝った麗央さんが私を見た。
「まずは……美唯、ごめんな」
それは何のごめん……なの?
「……親父が美唯に金を渡して、別れてほしいと言ったと聞いた」
それは……お父様本人から聞いたのかな?
「……親父から、お金は受け取ってもらえなかったって聞いたよ」
「え、話が違う……」
話さないって、約束したはずなのに……な。
麗央さんは、ハハっと笑うと「親父、受け取ったとお伝え下さいなんて言っていたって暴露してたよ」と付け加えて言った。
「それでさ……親父は言ったんだ、『強い女性(ひと)じゃないか……』って、『だけどそれに比べて、お前自身は誰かを守れる強さは持っていない。』ってね」
誰かを守れる、強さか……。
だけど、縁談は? 安座間財閥のご令嬢様と婚約するって。
「美唯の心配してる縁談とやらはとっくの昔に俺が断ってるよ……親父が勝手に持ってきただけ。」
「そうなんだ……」
「それと……『お前は、ただ前にあるレールを歩いてるだけ。お前はお前だけの道を作れ。場所はここじゃなくてもいい。結果を残せ、そうじゃなきゃあの子を迎えに行くなんて無理だ……大切な人を守れない奴が社員を率いて、守ることは出来ない』とも親父に言われたな」
……え? だから、会社を作ったの?